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2006年7月19日

大阪市長
大阪市政改革本部長
關 淳一様

大阪市労働組合連合会
執行委員長 木下平和

「市政改革」についての要望書

 日ごろは私たち労働組合活動に対してご理解とご協力を頂き感謝申し上げます。
 さて、現在、大阪市が進めている「市政改革」に対して職員の立場で全体的な意見と要望を申し上げます。

 「市政改革マニフェスト」による行財政改革が本格的に開始されました。財政悪化が進むなか、大阪市財政の大規模で複雑な各会計を包括的に圧縮していくことは重要であり、また、事態は全庁的な取り組みを必要としています。

 しかし、「改革」後に達成しようとするビジョン、大阪市のめざすべき自治体像、それらを実現するための施策の基本方向が不明確であり、民主的市政運営の上からも職員間・市民間の議論がなされていないのは問題であります。

 また、「改革」の理念や政策の基本方向についての職員参加や市民参加がないままに、改革のプランが決り、推し進められる上位下達型の改革手法も大きな問題といえます。「改革」がもたらす大阪市への広範な影響についての検討を欠いたまま、「改革」そのものが目的化され推し進められるとしたら本末転倒であるといえます。

 市労連は、市民とともに公共サービスのありようを考え、現場・地域から政策提起を行い、市民協働の視点から市政の改革を推進しなければならないと考えています。

 大阪市・市政改革本部として「質の高い公共サービス」に向けた改革を確実に推進するためにも市民参画のもとでの議論が尽くされるとともに、職員との議論については、早急に意見交換の場を設置し、充分な議論が尽くされるよう求めます。

 以下、「市政改革」について、現在時点における市労連としての考え方を提起し、今後の取り組みに活かされるよう要望します。


(1)「改革」の目的・理念、自治体の役割のあり方について

  1. 「改革」後に達成すべきビジョンをどのように描き、今後、大阪市という自治体がどこにむかうのか。何のために、何をめざして「改革」するのか。そのことを考えるときに、本格的な少子高齢社会、人口減少社会が到来し、社会経済の急速なグローバル化が市民生活の隅々まで進行するなか、これまで市民生活を支えてきたさまざまな社会システムが弱体化しているなど、社会が大きな転換期に直面しており、市民の安全安心が脅かされている。

  2. 深刻化する地球温暖化等の環境問題を考えれば、これまでのようには都市の成長を望み難いことは明白で、環境負荷を低減しながら新たな豊かさを追求していくことも求められてる。いわば成長と拡大をめざす社会から、非成長・非拡大の社会への移行という大きな社会変化が必要である。
     すなわち、基礎自治体である大阪市は、これまでも福祉、次世代育成、廃棄物処理など、住民に身近な分野で行政サービスを提供する役割を担ってきたが、社会経済情勢の変化により、環境政策、少子高齢化対策、次世代育成、治安対策などを中心に、担うべき行政サービスの範囲は広がり、役割の重要性も高まっている。

  3. 大阪市における一般会計の歳出構造をみても、目的別経費では民生費、性質別経費では扶助費が大きく増加している一方、目的別経費では土木費、性質別経費では普通建設事業費が減少しており、質的な変化が生じている。
     大阪市における5年・10年先の地域社会のすがた、そこにおける市行政の役割変化を充分に踏まえた自治体再構築の基本方向について職員間で広く議論され、基本認識として共有され、市民間でも議論・共有されていくことが重要である。

  4. 国民の間に格差の拡大への懸念が強まるなか、セーフティネットの構築が求められているが、「改革」の結果として、市民生活を支える様々なセーフティネットがさらに弱体化し、地域のかかえる問題がより深刻化してしまっては何の意味もありません。今後は、住民と市行政が協働して安心・安全の持続可能な地域社会を構築していくことが重要となり、そのための財政的な手立てがこれまでのように期待できないことも事実である。

  5. 市労連は、住民に身近な基礎自治体である大阪市の役割の変化、自治体再構築の基本方向・政策が活発に議論され、認識共有され、そのための財政的、組織的、人的な基盤を固めていくことが改革の理念・目標とされなければならないと考える。

(2)「改革」に職員参加・市民参加を

 「改革」の理念や政策の基本方向について職員参加や市民参加がないままに、改革のプランが決り、推し進められる上位下達型の改革手法に問題を感じていることは前述した。従来のしがらみに囚われずスピード感のある改革を進めるためには、トップダウン方式が効率的ではある。しかし、このやり方が職員に不安感や無力感を生み出していることも事実である。しかも今後、市民と行政の対話のなかで、政策・事業が決定され推進されていくことを実現していこうとすれば、広く現場の職員や市民を巻き込んだボトムアップ型の改革、政策遂行が必要となる。職員参加・市民参加のプロセスを抜きにして、どのような改革も決してうまく進まないと考える。早急な検討を要望する。

(3)市民自治に支えられた自治体をめざして

 当然のことですが、大阪市という自治体が市民を主体にして構成されている以上、市役所が何をどこからどこまでやるのか、ということについて市民に決定権がある。

 しかし、これまで市民自治的な自治体運営について、具体議論がされず、市労連としても不十分であったと考える。大阪市という自治体における市民自治の制度・しくみづくりの未進展・未確立というべきものが現在の事態を招いた一因であったといえる。

 もちろん、これまでの右肩上がりの財政状況下では、事業間に厳格な優先順位をつける必要性もなく、地域社会の諸問題に対して市行政が独自で判断してサービスを拡大していくことに、市民の暗黙の了解が得られやすい事情もあり、市民にとっても、いわば「お任せ民主主義」であったと考える。

 しかし、そのような状況が過去のものとなった現在、個々の事業の妥当性や、諸事業間の優先順位について、何を市行政固有の課題とし、何を市民自身の問題とするのかについて、あるいは協働して対応していくべき課題は何かについて、市民と行政の対話のなかで判断していくことが不可欠となり、様々な場面で具体的に問われることになる。

 市民自治の視点から大阪市という自治体を自律的運営ができるように改革することが真の市政改革であり、そのためには市民参加、情報公開、総合計画、政策評価、オンブズマン、住民投票など、自治体運営の基本ルールを市民とともにつくり上げ、それらの制度やしくみを作動させていくことが重要である。

 こうした観点から、大阪市においては、とくに以下の基本的な条件を整備していくことが重要であると考える。

  1. 対話の場と地域分権・組織分権の推進
     
    第1には、個々の事業の見直しから市行政全体の組織再編まで合意形成を図っていくためには、そのための手続過程がなければならず、市民と市行政の対話の場が強く求められており、より一層の取り組みと制度化が必要であると考える。
     右肩上がりの財政状況下で、事業やサービスを拡大するときには、求められなかった対話が、一つの事業を縮小・廃止、あるいは再編しようとする際に不可欠の条件となる。また、一つの事業をめぐって、市民同士が受益者と負担者に分かれ、利害が対立するという場面も想定される。そのため、これまでの審議会などの方式に加えて、対話集会、個別問題をめぐる懇談会、ワークショップ、あるいはインターネットの利用によるフォーラム(市民の広場)づくり、住民投票制度の活用などが積極的に検討・活用されていくべきである。
     同時に、区役所への分権を進めて、市行政全体を本庁中心の集権型から分権型のしくみへ転換させるとともに、区民の意見をもっと直接に反映できるしくみづくりについても積極的に検討されるべきである。すなわち、区・区役所は、これまでの地域における行政サービスの総合窓口としての拠点であるだけでなく、地域社会の課題を解決するための市民の参加と協働の拠点としての機能が必要とされていると考える。すでに指定都市のなかには、区民による会議(区民会議)を設置して、地域の課題を地域で解決するしくみをつくり、取り組みを進めている都市もある。また、2004年の地方自治法改正によって、小(中)学校区エリア単位に地域自治区(地域自治協議会)を設置できる途も開かれている。大都市のガバナンスのあり方として、行政区・地域レベルに本格的な住民自治のしくみ・組織を置くべきである。

  2. 市民参加の政策評価(行政評価)システム
     
     第2には、市民参加の政策評価のシステムの構築の必要性についてである。政策評価は、大阪市の施策や事業の有効性・効率性・経済性を追求し、政策形成・実施過程の透明性を高め、市民の意見を施策に反映させる重要なツールとなる。何のために何をしているのかということを誰に対しても明らかにする唯一のツールである。
     今後は、削減しやすいところから予算を削るという予算編成は続けられない。政策評価を市民に広く公表し、施策・事業の廃止や削減は市民が選択するということを実現していくために、例えば市民が評価を行える施策情報の公開・発信、市民参加型評価のあり方の検討、「市民評価委員会」(仮称)の設置など、市民参加の政策評価(行政評価)システムを創造し、確立していくことが重要である。

  3. 身近な地域における市民活動の場づくり
      第3には、身近な地域における市民活動の場づくりの必要性についてである。地域における公共サービスを担うのは行政だけではない。地域の多様な市民活動団体の経常的な活動拠点となるよう、既設の遊休施設等を活用・開放するなど、市民活動の場を各区に少なくとも一つつくることが早急に求められている。また、市民活動の場は市民のだれもが気軽に利用でき、共通の一定のルールのもとに活動できる拠点として整備する必要がある。

  4. 入札・契約制度改革―「政策入札」への転換を
     基礎自治体として社会的責任を果たすためには、入札・契約制度改革が大きな課題である。入札・契約制度については、価格と価格以外の環境への配慮、福祉、男女共同参画、公正労働基準などの社会的価値を判断基準に組み込んだ「総合評価方式」を導入することが求められている。これまでの価格のみを判断する「価格入札」を、いわば「政策入札」へと改革することによって、社会的価値を実現する新しい政策手段が実現するとともに、談合が行われにくい、コンプライアンスの制度を実現することができると確信するものである。大阪市として独自に優先的に追求すべき社会的価値を定め、それを入札・契約制度に反映させることで、独自性のある政策を推進することにもなる。条例制定などを含め、早急な検討を要望する。

以上

 

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