2020年3月19日
大都市協が人事主管者会議に、2020年賃金引き上げ・労働条件改善を申し入れ
大都市労連連絡協議会(大都市協)は、3月19日(火)に東京都で大都市協ブロック会議を開催し「2020年賃金引き上げ・労働条件改善に関する要求」などについて協議した。
その後、当地で開催中の大都市人事主管者会議に対して、以下の申し入れを行った。
2020年3月19日
大都市人事主管者会議 様
大都市労連連絡協議会
2020年賃金引上げ・労働条件改善に関する要求書
日頃から、大都市職員の賃金・労働条件の改善に尽力されている貴職に敬意を表します。
2019年賃金確定では、一部自治体を除き月例給・一時金の引上げが行われましたが、低率・低額の引上げであり職員の生活改善には不十分な内容でした。また、これまで政府が地方自治体及び人事委員会に対して、助言と称する指導、圧力、不当介入を強め、給与制度の総合的見直し、持ち家に係る住居手当や配偶者に係る扶養手当の見直し、退職手当の見直し等が行われたことで、自治体職員の生活実態は悪化をしています。さらに、職員の減少と求められる行政サービスの増加の相反する状況においても何ら手立て無く、超過勤務のみの削減がさらに求められ業務の遂行は困難を極めています。
このような現状の中でも、職員は行政サービスを低下させることなく、責任をもって業務に従事しています。
貴職におかれましては、職員が安心して業務に専念できるよう、大都市での生活実態を直視し、職員の生活防衛と改善に向けた要求を真摯に受け止め、その実現に尽力されますよう申し入れます。
記
1.賃金の改善について
- (1) 賃金水準の引上げ
- ① 2020年の給与改定にあたっては、政府・総務省による総人件費削減の押しつけや地方行財政への介入に屈することなく、自主的・主体的立場を堅持して、労使交渉、労使合意による自主的解決を図り、大都市自治体に働く職員の生活が向上できる賃金水準に改善すること。また、技能労務職員の賃金水準の低下となる見直しは行わないこと。
- ② 再任用職員の賃金水準を抜本的に改善すること。
- ③ 「地域手当」については、本給繰入を基本に改善すること。
- (2) 賃金決定基準の改善について
- ① 初任給決定基準ならびに中途採用者の賃金改善を行うこと。
- ② 昇格基準の改善を図ること。
- ③ 病休者・育休者などの昇給抑制等に対する復元措置の改善を図ること。
- ④ 新たな人事評価制度の検討にあたっては、十分に労使協議を行い、合意なき導入は行わないこと。また、勤務条件等、処遇への活用は行わないこと。
- (3) 諸手当の改善について
- ① 扶養手当については、支給額を引上げ、扶養認定及び扶養認定限度額等、支給基準の改善を図ること。
- ② 住居手当については、国と異なる実態を踏まえ、制度の抜本的改善と支給額の引上げを図ること。
- ③ 通勤手当については、実費全額支給とし、引続き、交通用具利用者に対する手当を改善すること。併せて全額非課税とすること。
- ④ 交替制・変則勤務者に対する手当等を充実すること。具体的には、夜勤手当を100分の50、超過勤務手当を100分の150(深夜勤100分の200)、休日給を100分の200に改善すること。
- ⑤ 1か月45時間を超え60時間以内の超過勤務に対する割増率を引き上げること。なお超過勤務手当を全額支給すること。
- ⑥ 一時金については、年間支給月数を5カ月以上とすること。併せて成績率の導入や拡大を行わず、加算措置の改善を図ること。また、支給に当たっては、基準日主義を改めて、勤務実績に基づく支給とすること。
- ⑦ 退職手当は、公務の特殊性に見合った制度・水準に改善すること。
- (4) 関連労働者の賃金改善について
- ① 全国全産業一律最低賃金の制度化に努め、地域別最低賃金の大幅引上げ等、具体的取組みを早急に行うこと。
- ② 公共サービス基本法の制定を踏まえ、業務等委託先企業に対する適正な賃金の支払いをはじめ公正労働基準の遵守の義務付けなど、公契約条例の制定に積極的に取組むこと。併せて公契約における適正な労働条件を義務付けるILO94号を批准するよう政府関係機関に働きかけること。
- ③ 大都市自治体に雇用される労働者の最低賃金を行政職(一)表、高卒初任給同等以上に引上げること。
- ④ 会計年度任用職員の賃金労働条件については、常勤職員との「均等待遇」を基本に、抜本的な改善を図ること。
2.労働時間の短縮について
- (1) すべての職場で完全週休2日制、有給休暇の完全取得を実施するため、職場環境の改善に努めること。そのために必要な予算・人員の確保を含め諸条件の整備を行い、勤務時間については、1週37時間30分、1日7時間30分、休憩時間を1時間とすること。
- (2) 実効ある超過勤務縮減に向けた具体策を確立すること。また、時間外勤務の上限時間については、業務内容にかかわらず月45時間、年360時間までとすること。
- (3) 厚生労働省で定めた「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に基づき全職員の労働時間を完全に把握し、サービス残業など、未払い賃金を直ちになくすこと。
- (4) 夏期休暇増をはじめ、リフレッシュ休暇などの休暇制度の新設・改善、自己啓発・自己実現及び社会貢献を促進するための休業制度の新設を含め、総合的休業制度を確立すること。
- (5) 教育職場・公務職場への1年単位の変形労働時間制の導入・条例化を行わないこと、長時間労働の解消に向けて労使交渉を尽くすこと。
3.職員の福利厚生について、雇用主責任を果たすために、福利厚生事業の充実・改善を図ること。
4.労働基本権の確立について
- (1) ILO結社の自由委員会第329次、第331次報告・勧告を全面的に受け入れ、公務員労働者に労働基本権を完全に保障するとともに、団体交渉に基づく賃金・労働条件決定制度を確立するよう政府関係機関に働きかけること。
- (2) 労働運動を理由とする行政処分を一切行わないこと。
- (3) 労働運動を理由とした過去の一切の行政処分を撤回し、損害の回復措置を講ずること。
- (4) 在職専従休職期間の制限を廃止すること。
5.年金制度・医療制度などの社会保障制度の充実に向けて、政府関係機関に必要な措置の働きかけを行うこと。
6.高齢期の雇用問題について
- (1) 高齢期雇用制度については、雇用と年金の確実な接続を図るため、段階的な定年年齢の引上げを中心とする新たな制度確立に向けて労使交渉を尽くすこと。また、65歳まで働き続けられることが困難な職種の存在を踏まえ、職員の希望による多様な働き方が可能となる制度の確立を図ること。
- (2) 高齢期雇用制度の確立に当たっては、国と異なる大都市自治体の実態を踏まえ、人事給与制度の改悪を行わず、生活水準の維持・確保を基本に労働組合との十分な協議と合意に基づくこと。
- (3) 再任用制度については、希望する者全員の任用を保障すること。
7.男女共同参画社会の実現、女性労働者の労働基本権の確立について
- (1) 男女共同参画促進の実現に向けて、「次世代育成支援対策推進法」に基づく「特定事業主行動計画」については、労働組合と協議の上で実効性のあるものとし、男女がともに家庭的責任を担いつつ、職業生活と家庭生活を両立できる環境整備など、具体的な支援措置を充実させること。
- (2) 公務における男女平等実現のため、昇任・昇格基準などを抜本的に改善し、女性を積極的に任用することや間接差別の禁止など、その実効性を高めること。
- (3) 産前・産後休暇の延長や妊娠症状対応休暇の充実など、諸休暇制度を改善するとともに、職場改善に努めること。
- (4) 職業生活と家庭生活の両立支援のため、子どもの看護休暇、介護休暇、育児休業、育児部分休業および育児時間等を改善し、昇給・昇格などの欠格条件としないこと。また、男性職員が育児休業を取得しやすい職場環境にすること。
- (5) 正規職員による産休・育休代替措置を全職種に拡大すること。
- (6) セクシャル・ハラスメント及びパワーハラスメントの実態を把握し、実効性のある防止対策を確立すること。
8.安全衛生対策を厳格に確立するため、メンタルヘルス対策をはじめ総合的な対策を労使協議で確立すること。
9.行政サービスの水準を低下させることがないように、業務の安易な民営化や民間委託を行わないこと。また、「市場化テスト」を強要することなく、地方独立行政法人、指定管理者制度については、労働組合と十分な協議を行うこと。
10.自治体財政危機を理由とした、賃金・労働条件の引下げや行政サービスの低下をしないこと。また、地方分権にふさわしい税源移譲、必要な地方交付税の確保を求め、自治体財源の確立のため政府関係機関に働きかけること。
以 上
人事主管者会議 本日の要請は、慣例により、大都市人事主管者会議を代表して東京都がお受けする。
はじめに、新型コロナウイルス感染症対策について、大都市労連の皆様のご協力に感謝申し上げる。急速な感染拡大を回避するために重要な時期にあり、状況は刻々と変化しているが、この難局を乗り越えるべく、引き続きご協力をよろしくお願いする。
先ほど承わった大都市労連連絡協議会の「2020年賃金引上げ・労働条件改善に関する要求」について、要求書及び発言の内容は、早速、私どもから各都市にお伝えする。
世界的な感染症の拡大に伴い、各国市場において株価が急落するなど、国内外で景気の先行きに不透明感が一段と増しており、企業を取り巻く経営環境は、より一層厳しいものとなっている。
こうした中で、今春闘においては、賃上げ縮小が相次ぐとともに、一律のベースアップではなく、個人の評価を反映した賃金引上げの動きもみられ、昨年までとは異なる様相を見せている。
一方、現在開会中の通常国会において、地方公務員法等の改正案が提出されており、公務員の定年が令和4年度から2年に1歳ずつ段階的に65歳に引き上げられることとなる見込みである。国会の動向を注視しながら、各都市において具体的な制度設計を進めていく必要がある。
このような情勢を踏まえ、給与をはじめとする地方公務員の勤務条件については、公務運営を取り巻く諸状況を考慮した上で適切に対応し、住民の理解と納得を得ていくことが不可欠である。
いずれにしても、皆さんから頂いた要求の内容については、各都市の事情もあるので、それぞれの都市ごとに、今後よく検討させていただきたいと考えている。
以上