更新日:2018年10月1日
2018年大阪市人事委員会報告及び勧告
大阪市人事委員会は9月28日、「職員の給与に関する報告及び勧告」を行った。勧告内容は月例給について、本年4月時点で453円、率にして0.11%、給与減額措置後では1,101円、率にして0.28%となる。
市労連は勧告に際し、とりわけ月例給について、人事委員会から明らかにされた勧告結果は、較差が小さく不満ではあるものの、引き上げという観点からすると、当然の結果として受け止めることを表明した。
また、民間給与データの取り扱いに関して、昨年に引き続き、スミルノフ・グラブス検定を利用し、極端なデータの除外を行っているが、民間給与データを除外すること自体、職員の給与水準引き下げが目的であると認識することから、国、他都市と同様、従来の手法に改めるよう求めてきた。
その他、総合的な人事・給与制度の構築を言及するよう要請し、定年引き上げにかかわっては、生涯賃金に影響を及ぼすような検討は行うべきではないことを述べてきた。
市労連は、2018賃金確定闘争では、組合員の生活を守るべく、粘り強く闘う意思を表明した。
人事委員会委員長 これまで検討してきた結果、とりまとめることができました「職員の給与に関する報告及び勧告」を、本日、市長及び市会に対して行いました。
これらの内容については、局長から説明申し上げます。
行政委員会事務局長 はじめに、本年の給与改定についてですが、月例給については、職員と民間企業従業員の本年4月分支給額を調査し、責任の度合、学歴、年齢別に対応させ、ラスパイレス方式により比較を行いました。職員給与については、現在、給料及び管理職手当の減額措置が実施されていますが、この給与減額措置がないものとした場合の行政職給料表適用者の平均給与月額は395,403円であり、給与減額措置後の平均給与月額は394,755円です。一方、民間給与は395,856円であり、その差は、給与減額措置がないものとした場合には453円、率にすると0.11%となり、給与減額措置後は1,101円、率にすると0.28%です。
また、特別給については、民間の支給割合は4.44月分という調査結果でした。
勧告に当たりましては、職員に本来支給されるべき給与、すなわち給与減額措置がないものとした場合の職員給与と民間給与との較差に基づき行うことが適当であると判断し、本年は公民較差0.11%を解消するために月例給の引上げ改定を行うよう勧告いたしております。月例給は平成28年以来2年ぶりの引上げ改定の勧告となります。
月例給の引上げについては、民間の初任給との間に差があること等を踏まえ、初任給の給料月額を1,500円引き上げるとともに、較差の範囲内で主に40歳未満の職員に対して適用される級及び号給についても引き上げ改定を行うことが適当である旨を言及しています。
なお、医師及び歯科医師に対する初任給調整手当は、人材確保の観点から、人事院が勧告した措置等を勘案し、引き上げる必要がある旨、勧告しています。
保育士給料表適用者及び幼稚園教育職給料表適用者についてですが、民間では年齢が20歳台の若年層が最も多くを占め、勤続年数では10年未満の者が多数となっているなど、本市と民間とでは組織・人事の構造が大きく異なっているため、直接的に本市給与水準と民間給与水準とを均衡させることには慎重であるべきと考えています。また、保育士給料表及び幼稚園教育職給料表は、民間の保育士又は幼稚園教員の給与水準との直接的な均衡を基にしたものではないため、公民較差額を算出し、それに基づき給与改定を行うことは適当ではないと考えております。そのため、較差額の算出ということはしておりません。
このような考え方の下、保育士給料表については、本市保育士の若年層の給与が民間を下回っていることから、初任給を含む若年層を中心に引き上げることが適当である旨を言及しています。
幼稚園教育職給料表については、そのような状況は見られないことなどを考慮し、改定すべき状況にはない旨を言及しています。
特別給については、先に述べたとおり、民間の支給割合は4.44月分という調査結果でした。勧告月数は、国や他都市と同様に、0.05月単位で決定しており、また小数点第2位は2捨3入・7捨8入するので、4.44月分だと4.45月分となります。そのため、本市職員の期末・勤勉手当の支給月数4.40月分との差は0.05月分となり、期末手当及び勤勉手当の年間支給月数を0.05月分引上げて、4.45月分とすること、引上げ分については勤勉手当に配分することを勧告しております。特別給は平成26年以降5年連続の引上げ改定の勧告となります。
改定の実施時期についてですが、月例給については、本年4月時点での公民比較に基づくものであることから、本年4月に遡及して実施する必要があるとしています。特別給について、本年12月期の期末手当及び勤勉手当は、改定条例の公布日から実施することを、平成31年6月期以降の期末手当及び勤勉手当は平成31年4月1日から実施することを勧告しております。
勧告に基づく職員給与の試算でございますが、勧告どおりに改定が実施された場合、本委員会の試算によりますと、行政職職員の平均年間給与額は26,886円増加となります。
次に、意見として、給与制度等に関する課題と人事管理制度に関する課題について言及しています。
まず、給与制度等に関する課題でございますが、「公民比較の在り方」としまして、本年は民間給与実態調査より小規模の事業所である正社員10人以上50人未満の民間事業所を対象に従業員の給与実態調査を実施しました。今回の調査結果につきましては、給与という重要な勤務条件を決定する基礎資料とするにはその精確性について課題があり、公民比較に用いることは適切ではない旨言及しています。
「民間給与データの取扱い」としまして、昨年に引き続き、スミルノフ・グラブス検定を利用して極端な民間給与データを公民比較の対象から除外しています。この取扱いにより、平均値からのかい離が極端なデータについては除外することができ、公民較差への影響度はマイナス0.07%です。
「給料表の構造等」について、職務給の原則から、これ以上の号給の増設については慎重に検討する必要があり、今後も、業績・能力評価に基づく処遇の在り方を継続的に検証し、職員の執務意欲の維持・向上の方策等について検討を進めていく必要がある旨言及しています。
「高齢層職員の給与等」について、定年の引上げを念頭に、定年前の職員も含めた高齢層職員の給与、処遇、勤務体系等を包括的に検討していく必要がある旨言及しています。
「教育職員の給与制度等」として、今後の教育職員の人事給与制度に関し、「教育職員の人材確保策としての初任給水準の引上げ」などについて言及しております。
「その他」として夜間看護手当と宿日直手当の支給水準について検討する必要がある旨言及しています。
次に、人事管理制度に関する課題につきましては、職員一人ひとりの生産性の向上と、誰もが働きやすい職場環境の整備という観点から言及しております。「(1)長期的視点に立った組織・人員体制の構築及び人材の育成」として「組織・人員体制の構築」「人材育成及び女性職員の活躍促進」「人事評価」について言及しており、「組織・人員体制の構築」の中で「定年の引上げ」「人材の確保」について言及しております。ほかに「(2) ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた長時間勤務の是正と働き方改革」として、「長時間勤務の是正」「管理監督者による適切な勤務時間の管理」「両立支援の推進」について言及しております。また、地公法の改正により制度の整備を図る必要があることから「(3) 非常勤職員の任用制度等の整備」についても言及しております。
以上が本年の給与報告・勧告の概要です。
組合 冒頭、人事委員会におかれては、平素より私たちの賃金諸条件等の維持・改善に尽力いただいていることに敬意を表しておきたい。
さて、ただ今説明された本年の「職員の給与に関する報告及び勧告」の内容について、何点かに絞り市労連の考え方を申し上げる。
まず、公民給与比較であるが、月例給については現在、管理職において給料及び管理職手当の減額措置が実施されており、この給与減額措置がないものとした場合には453円(0.11%)、給与減額措置後では1,101円(0.28%)民間が公務を上回っており、一時金については、年間支給月数について0.05月分民間が上回っているとの説明があった。
改定にあたっては、本来支給されるべき給与、すなわち給与減額措置がないものとした場合の職員給与と民間給与との較差に基づき行うことが適当であるとして、公民較差0.11%を解消するために月例給の引き上げ改定を行うとともに、一時金については、年間支給月数を0.05月分引き上げて、年間支給月数を4.45月分とするとの勧告がされた。大阪市においては、職員・組合員の給与水準が引き下げられており、人事委員会が明らかにした勧告結果は、較差が小さく不満ではあるものの、引き上げという観点からすると、当然の結果として受け止める。
保育士給料表については、本市保育士の若年層の給与が民間を下回っていることから、初任給を含む若年層を中心に引き上げることが適当であると言及されているが、保育士及び幼稚園教員については、2015年に独自の給料表が策定され、給与水準が引き下げられた経過がある。人事委員会として、本市と民間とでは組織・人事の構造が大きく異なっているため、直接的に本市給与水準と民間給与水準とを均衡させることには慎重であるべきとしている。職務の重要性に鑑み、人材確保の観点から処遇確保の必要性、保育所及び幼稚園の運営への影響を考慮し、早急な給料表の水準回復を言及されるよう引き続き求めておく。
給与制度等に関する課題として、「公民比較のあり方」について、10人以上50人未満の民間事業所を対象に調査を実施したが、その調査結果については、給与という重要な勤務条件を決定する基礎資料とするにはその精確性について課題があり、公民比較に用いることは適切ではないとしている。その結果については当然のことと認識するとともに、この間、市労連として、調査対象企業規模50人以上とした比較方法を改め、以前の調査対象企業規模に戻すとともに、団体交渉によって賃金・労働条件を決定している事業所を対象とするよう求めていることを、改めて指摘しておく。
「民間給与データの取り扱い」について、昨年に引き続き、スミルノフ・グラブス検定を利用したことにより、平均値からの乖離が極端なデータについては除外することができ、公民較差への影響度はマイナス0.07%としているが、民間給与データを除外することが、職員の給与水準引き下げの要因となっていることは明らかである。一定条件に基づいて抽出したデータである以上、比較対象とすべきであり、データを除外すること自体、職員の給与水準引き下げが目的であると認識することから、国、他都市と同様、従来の手法に改めるべきであると強く指摘しておく。
「給料表の構造等」については、これ以上の号給の増設については慎重に検討する必要があるとし、今後も、職員の執務意欲の維持・向上の方策等について検討を進めていく必要があるとの言及にとどまっている。現在の給料表構造と昇給制度においては、給料表と昇給制度の乖離が大きく、各級最高号給付近に位置付けられて昇給や昇格ができない職員が多数存在しており、職員の勤務意欲の観点からも研究・検討ではなく、早急に抜本的な見直しが必要であり、総合的な人事・給与制度の構築に向けた言及を行うよう引き続き要請しておく。
定年の引き上げにかかわって、定年前の職員も含めた高齢層職員の給与、処遇、勤務体系等を包括的に検討していくと言及されているが、現行の給与水準を維持することは当然のこととして、生涯賃金に影響を及ぼすような検討は行うべきでないことを申し上げておく。また、人材の確保についても言及されているが、安定的な行政運営を確保するためにも若年層職員の計画的な採用は必要であり、年齢や人員構成のバランスが取れた組織の構築に向けての対応を求めておく。
「教育職員の人材確保策としての初任給水準の引き上げ」について言及されているが、2017年に府費負担教職員の給与負担等の権限が府から市へ移譲され、教育職給料表における給与月額の引き下げや、教職員の勤務条件の後退などによって、教職員のモチベーションは大きく低下している。また、教職員の長時間労働も問題視されていることから、教職員の給与・勤務労働条件について、子どもたちの教育条件や教育環境の維持・向上のための良識ある対応を引き続き求めておく。
人事評価制度については、これまでの結果を分析し、絶対評価基準の一層の明確化や相対評価制度のあり方などの検討を進めると言及されている。
現行の人事評価制度は、相対評価を行うことで公平・公正性、客観性を著しく毀損しており、組合員の十分な理解の下で人材育成のための制度へとすることが必要と認識している。人事評価を利用して、能力実績主義に基づく競争を煽り、職員間に格差を生じさせることを目的とすることはあってはならず、職員一人ひとりの能力の違いや各職場事情等を考慮し、制度の趣旨に合致した制度構築が必要であることを申し上げておく。
長時間勤務の是正は、早急に解決すべき課題であると認識しており、国においては、超過勤務命令の上限を人事院規則で定めることが言及された。地方公務員においては、労基法33条の規定もあることから、上限規制の条例化など、国の措置を踏まえた対応を求めてきたが、条例化などの具体意見が出されなかったことは残念である。引き続き、長時間勤務の是正や適切な勤務時間の管理について、人事委員会としての対応を求めておく。
最後に、非常勤職員の任用制度等の整備について言及されている。2020年4月より導入されようとしている「会計年度任用職員」制度について、任用の明確化など地公法の改正内容を踏まえ、常勤職員との均等待遇を基本とした制度となるよう必要な対応を求めておく。
以上、「勧告・報告」の内容に関する考え方を述べさせて頂いた。
いずれにしても、今後、市側に対して賃金・労働条件改善を求め主体的な交渉を行うこととするが、人事委員会としても、私たちの指摘内容を十分踏まえ、懸命に働く職員のモチベーションを低下させることなく、その向上のためにも、改めて使命と職責を果たされるよう求めておく。
人事委員会委員長 ただいま、市労連の皆様の「報告・勧告」の内容に関する考え方について、お聞きしました。
本委員会としましては、これまでと同様に、中立かつ公正な第三者機関として、法に定められた責務を誠実に果たしてまいりたいと考えております。
以 上