更新日:2018年3月6日
「チェックオフ廃止事件」
経過
組合費のチェックオフについては、公務員バッシングを背景とした2008年、大阪市会において議員提案による条例改定が行われ、職員団体である市職のチェックオフについては廃止されたが、労組法適用の市従・水労・学職労・学給労においては継続されていた。
橋下市長の就任以降、「不適切な労使関係を適正化する」ことを理由として、2012年2月に、労使協定によって実施してきたチェックオフについて一方的に廃止することを通告し、2013年4月から廃止されるに至った。
これに対し、市従・水労・学職労・学給労の四組合は大阪府労働委員会(以下、府労委)に不当労働行為救済申し立てを行い、2014年2月、府労委は、市側の不当労働行為を認定し、チェックオフ廃止通告の撤回とポストノーティス(誓約文書)の命令を交付した。
この府労委命令に対して、市側は、中央労働委員会(以下、中労委)に再審査の申し立てを行った。
2015年12月の中労委命令は、府労委命令の廃止通告の撤回については削除するものの、市側の不当労働行為については同様に認定し、ポストノーティス(誓約文書)の命令とともに、労使関係条例12条にかかわらず、組合からのチェックオフ再開の申し入れがあれば、誠実に対応すべきとしてきた。
しかしながら市側は、「労働組合に対して行ったチェックオフ廃止についての通告が、合理的な理由も手続的配慮もないとして不当労働行為と認定されたことに不服がある。」「職員団体では既にチェックオフを廃止しており、職員団体と労働組合で異なる取り扱いをすることは市民の理解を得られない。」ことを理由として、大阪市会・財政総務委員会での議案承認を経て、東京地裁へ本件命令の取り消し訴訟の提訴を行った。
市労連は、この訴訟が大阪市と国(厚生労働省・労働委員会)とで争われることから、補助参加人としてかかわることとなった。
東京地裁においては、数回にわたり口頭弁論・証人尋問等が行われ、判決を迎えることとなった。
判決
2月21日、東京地裁において、市側が提訴した「労働委員会救済命令取消請求事件」にかかわる判決が出された。
東京地裁の判決は、チェックオフの廃止を、労働組合に対する支配介入に該当すると認め、市側の請求を棄却するとした。
市労連はこの結果を受け、自治労大阪府本部、市労連弁護団との連名による声明を発出した。
2018年2月21日
大阪市チェックオフ廃止事件東京地裁行政訴訟判決について(声明)
大阪市労働組合連合会
自治労大阪府本部
自治労・市労連弁護団
1.本日(2018年2月21日)、東京地方裁判所は、大阪市が提起した中央労働委員会(以下、中労委)のチェックオフ廃止通告を不当労働行為とした救済命令の取消請求を退ける判決を言渡しました。
2.大阪市は、チェックオフ廃止通告は、関係部局が独自に検討していたもので橋下氏の労働組合攻撃の意思に従ったものではない、と主張しました。これは、橋下市長の言動やメールなどの証拠を無視する詭弁と言うほかないものでした。
また、大阪市は労使関係条例の成立により不当労働行為救済が許されなくなったと主張しました。労使関係条例12条は組合に対する便宜供与は行わないとしていますが、本件不当労働行為救済申立て後に成立した条例であり、条例は憲法・労働組合法等国の法令に反することはできません。大阪地裁及び大阪高裁は、労使関係条例12条は不当労働行為を正当化するものではない等と限定的な解釈を示しています。
3.橋下市長は2011年12月の就任以来、強制アンケート、組合事務所退去通告、チェックオフ廃止、団交拒否、労使関係条例の制定等の職員及び労働組合に対する相次ぐ不当な攻撃によって労働組合の弱体化を図ってきました。
橋下市長の職員・労働組合攻撃に対し、市労連及び関係労働組合は、労働委員会に対する不当労働行為救済申立、そして裁判所に対する訴訟提起などに取り組んできました。
その結果、市労連及び関係労働組合申立てにかかる全事件において、大阪市の違法行為が認められました。その数は、本日までに、大阪府労委命令が6件、中労委命令が4件、大阪地裁判決が2件、大阪高裁判決が2件、東京地裁判決が1件、合計15件となります。
2012年2月22日 | 大阪府労委 | 強制アンケート事件につき実行確保の措置 |
2013年3月25日 | 大阪府労委 | 強制アンケート事件につき救済命令 |
2013年9月26日 | 大阪府労委 | 事務所団交事件につき救済命令 |
2014年2月20日 | 大阪府労委 | 組合事務所退去、チェックオフ廃止等3件の申立てにつき救済命令 |
2014年6月27日 | 中労委 | 強制アンケート事件につき、大阪市の再審査申立てを棄却 |
2014年8月6日 | 橋下市長、強制アンケート事件につき、市労連等に対し誓約文を手交し、陳謝する | |
2014年9月10日 | 大阪地裁組合事務所退去事件につき不許可処分取消及び損害賠償支払いを命じる | |
2015年1月21日 | 大阪府労委 | 水労に対する協約破棄通告につき救済命令 |
2015年1月21日 | 大阪地裁 | 強制アンケート事件について損害賠償の支払いを命じる |
2015年3月24日 | 中労委 | 事務所団交事件につき大阪市の再審査申立てを棄却 |
2015年6月2日 | 大阪高裁 | 組合事務所退去事件につき、損害賠償支払を命じる |
2015年11月26日 | 中労委 | 組合事務所退去事件につき、大阪市の再審査申立てを棄却 |
2015年12月9日 | 中労委 | チェックオフ事件につき大阪市の不当労働行為を認め救済命令 |
2015年12月16日 | 大阪高裁 | 強制アンケート事件について損害賠償の支払いを命じる(増額) |
2018年2月21日 | 東京地裁 | 中労委・大阪市チェックオフ事件につき判決 |
橋下氏が大阪市長に在任していた間に、多数の不当労働行為が行われましたが、異常な事態というほかありません。
大阪市労使関係条例12条を理由に一切の便宜供与をしないとの態度を改め大阪市に対し、憲法、労働法を遵守し、労働委員会命令を誠実に履行し、誠実な団体交渉に入ること、速やかに正常な労使関係を確立することを要請します。
(別紙 中労委平成26年(不再)第15・16号大阪市チェックオフ廃止事件)概要
(1) 当事者
再審査申立人 大阪市
再審査被申立人
大阪市従業員労働組合(市従 執行委員長 上谷高正)
大阪市学校職員労働組合(学職労 執行委員長 場口博文)
大阪市学校給食調理員労働組合(学給労 執行委員長 寺西由記江)
大阪市水道労働組合(水労 執行委員長 中村寿夫)
(2) 大阪府労委申立日
(3) 大阪府労委命令交付日
2014年(平成26年)2月20日
(4) 大阪府労委命令の内容
本件チェックオフ廃止通告をなかったものとして取り扱うこと
ポストノーティス(不当労働行為を繰り返さないとの誓約文書の交付)
(5) 中労委命令の内容
ポストノーティス(不当労働行為を繰り返さないとの誓約文書の交付)