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2013年3月26日

労使関係に関する職員アンケート調査

不当労働行為救済申立事件にかかる救済命令のポイントと意義

1、救済命令の概要について

 「労使関係に関する職員アンケート調査(以下、職員アンケート)」事件に対する3月25日付け大阪府労働委員会(以下、府労委)救済命令は、大阪市労連と大阪市従、大交、水労(以下、大阪市労連)の主張をほぼ全面的に認めた内容で、大阪市による職員アンケートの強行を、市労連に対する不当労働行為(支配介入)と認定し、救済方法として、大阪市労連へのポストノーティス(謝罪文・誓約書)の手交を命じました。(支配介入かどうかの争点は後述)

 主文では、大阪市長と大阪市交通局長、大阪市水道局長に対して、「当市が、平成24年2月9日付け『労使関係に関する職員アンケート』を実施したことは、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後このような行為を繰り返さないように致します」との謝罪文(誓約書)を、大阪市労連に手交しなければならないとしています。

 今回の府労委命令に関する特徴点と言えるのは、以下の内容です。

  1. そもそも「官は悪をなさず」という法の建前があり、労働委員会が国や自治体に対して不当労働行為を認定し、救済命令を出すことは稀なことで、これまで出された救済命令の多くは団交拒否に関するものであることと、過去に遡っても、大阪市に対して不当労働行為の救済命令が出されたのは、大阪市政発足から2回目のことであること。(1度目は2010年9月の国保徴収員の団交拒否事件)
  2. また、職員アンケート自体は、大阪市労連が2月13日に府労委へ実効確保の申し立てを行った(同月22日に実行確保の措置勧告)こともあり、回収後、野村特別顧問(第三者調査チーム代表)がアンケートの集計を中止し、結果として資料やデータを廃棄していることから、既に傷は癒されているとして、不当労働行為の認定はするが、謝罪文(誓約書)の手交を命じない可能性が危惧されましたが、大阪市労連の主張どおりポストノーティスを命じたこと。
  3. なお、労働委員会の救済命令は、行政処分として公定力があり、直ちに履行すべき公法上の義務があり、仮に、大阪市が再審査申立をしたとしても、命令を即時に履行するべき義務を免れることはできないこと。

2.今回事件の争点と府労委の判断と評価について

(1)争点1…申立人大阪市労連は申立人資格を有するか

 大阪市労連のような地公法の職員団体と労働組合(地公労法適用組合)の混合組合が、労働組合であるかどうかについて争われましたが、府労委が、大阪市労連について不当労働行為の申立て資格のある労働組合であると認定したことは非常に重要なことです。そしてこの認定に基づいて、同日、大阪市労連に、「労働組合法第2条及び第5条第2項に該当する」労働組合であるとして「労働組合資格審査決定書」が交付されました。

 争点に関する判断では、大阪市が、地公法上、非現業で構成される職員団体(大阪市職が該当)は、労組法の適用が除外されており、本来二重の性格を併せ持つことを想定していないことを理由にして、「職員団体と労働組合の混合組合である大阪市労連は、事実上の存在としての労働団体にすぎない」と主張しましたが、府労委は、(1)現行法は、非現業員、単純労務職員、公営企業職員、民間に雇用された労働者などが共に加入する、いわゆる混合組合の存在を否定していない、とした上で、(2)被申立人が地方公共団体である場合の混合組合の申立人適格の有無については、その構成員たる労働者の団結権、組合加入の自由及び総合選択の自由などの権利を最大限に尊重し判断すべき、としました。

 そして、「労組法適用者の問題に関する混合組合の活動は、原則として労組法上の労働組合としての活動を認めるべき」、「構成団体の数や組合員数の多寡に関わらず、当該労働団体は、構成員たる労働組合に加入している労組法適用労働者の問題に関して、労働組合としての活動ができる」との解釈を示して市側の主張を退け、大阪市労連の不当労働行為申立人適格を有することを認めました。

 中央労働委員会においては、これまでも混合組合について労働組合であるとの認定を行ってきましたが、地方公務員の労働組合の場合は、市労連や、府労連、県労連などの混合組合として活動しているケースが多いため、混合組合が労組法適用組合であると改めて認められたことは、大きな意義があります。つまり、市労連などの混合組合は、労働組合として労働協約締結権や不当労働行為救済申し立てなどの活動が可能になることが明確になったということです。

(2)争点2…アンケート調査の実施が、市による、組合に対する支配介入に当たるか

【その1:実施主体について】
 アンケート調査は誰が実施したのか(大阪市か第三者調査チームか)

 アンケートの実施主体に関し、組合員からすれば、アンケート調査の実施主体が「業務命令」を出した市長や任命権者であることは疑いの余地がありませんが、大阪市は「アンケート調査は、大阪市から独立した第三者チームが主体として実施したものであり、大阪市には責任はない」という主張を行い、これも1つの争点になりました。

 これに対し府労委は、アンケート調査を行ったのが市当局と区別された調査チームであることに関し、「市は一定、自らの影響を排除しようとする姿勢をとっていたことが窺がえる」と、市の主張を受け流し、第三者調査チームの構成員が大阪市の特別顧問等設置要綱に基づいて大阪市から委嘱(任用)され、(アンケート調査)委託契約に基づく謝礼ではなく、同要綱に基づく謝礼として支払われており、大阪市からの独立性の確保を保証するような取り決めや条項もないことから、大阪市の「枠組みの中におかれていた」と認定しました。

 加えて、アンケート調査の依頼文書等からは、(1)趣旨説明メッセージに、任意の調査でないことや業務命令として回答を求めたり、処分の対象となり得ること等の記述があること、(2)このメッセージに市長などの署名があったこと、(3)総務局長が行政文書で、各所属長等に対して所属職員に周知を求めたこと、(4)アンケートサイトという市の設備を利用して回答を指示していること、などを理由に大阪市が実施したものだと断定しました。

 また、アンケート調査直前に行われた大阪市労連との意見交換の場で、市側は、独立したチームが調査を行うことを組合に説明したと主張していましたが、この点についても府労委は、第三者調査チームの独立性に関する説明をしたことの「具体的な事実の疎明がない」と一蹴し、市の当該主張は採用できないと断じました。実際、昨年2月1日の意見交換を行った時点では、組合側に内部調査を促すようなことを発言しただけなのに、間髪を入れないタイミングでアンケート調査を実施したことに関し、「組合が何もしないから実施した」とアンケート調査実施の正当性を主張していましたが、それが後付けの理由であることが露呈したと言えます。

 さらに、この第三者調査チームが日弁連ガイドラインによって組織し、同ガイドラインに則って調査した、故に独立性は担保されている、と、市側、特に野村特別顧問が主張していましたが、これに関し府労委は、同ガイドラインでいう第三者委員会に関し、「調査を依頼した主体との関係で独立性を保持された委員会をいうもの」であって、そのような独立性が保持された委員会による調査であっても、調査を依頼した主体と職員の雇用ないし任用関係を基になされている調査である以上、当該調査の実施過程において不当労働行為に該当する行為があったとして救済を求める場合には、「不当労働行為の成否は別としても、雇用ないし任用関係にある主体において当該不当労働行為についての被申立人としての責任を免れることはできない」と断じました。つまり、例え、第三者調査チームの独立性を主張する根拠にした日弁連ガイドラインが予定している第三者委員会であったとしても、実施主体は大阪市であり、依頼主責任は回避できないことが明らかになったと言えます。

 今回の府労委の判断は、大阪地裁で審理されている、職員アンケートに関する損害賠償請求事件にも適用できる内容であり、大阪市や野村特別顧問の言い逃れを許さないものとなっています。

【その2:調査内容について】
 アンケート調査の実施が不当労働行為に該当するか否か

 次に、アンケート調査自体が支配介入の不当労働行為に該当すると認定した理由ですが、今回の命令で府労委は、(1)組合に加入しているか、(2)加入のメリットをどう考えているか、(3)組合の影響力や非加入の不利益、(4)組合費の使途を把握しているかなど、アンケート項目5問についてのみで判断をおこないました。そして、市長就任以来「組合問題に執念を燃やして取り組んでいきたい」「組合を適正化する」などと、「市長がこれまでの市職員の組合活動について否定的な見解を強く表明している状況下で強制力を背景とし、かつ記名式で行われたアンケート調査であったことも考慮すれば、その余の項目について検討するまでもなく、本件アンケートが組合活動に対する支配介入であった」と結論付けました。

 また、大阪市に積極的な支配介入の意思がなかったからといって不当労働行為の成立が否定されるというものではないと大阪市の主張を退けました。

 これまでも、アンケートや使用者の言動が、不当労働行為に該当すると労働委員会命令や訴訟での判決が出されていますが、今回の府労委の命令は、丁寧でポイントを押えたものです。

3.まとめ

 総じて、専門的行政委員会である大阪府労働委員会が、大阪市が実施したアンケート調査について、労働組合に対する不当労働行為であることを明確かつ全面的に認定したこと、加えて、アンケートが開封されず廃棄された現時点においても救済命令を発したことは、大変意義のあることと言えます。

以上

 

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