2012年8月21日
大阪市人事委員会への申し入れ
市労連は、8月21日に大阪市人事委員会に対して、2012年の人事委員会勧告に向けた「申し入れ」を行った。
申し入れの中で、前例にない事情にあることを十二分に踏まえ、精確な公民水準比較を行った上で勧告するよう求め、勧告に本年の勧告に向けた基本的な姿勢、ならびに本年の調査作業の進捗状況と特徴点、現時点で予定されている本年の勧告時期について明らかにするよう求めた。人事委員会から「市内の民間企業従業員の給与と本市職員の給与とを均衡させることを基本としつつ、本市の給与制度が、国や他都市の状況、地方公務員法に定められた給与決定の諸原則の観点から、適切なものとなるよう勧告してまいりたい」と回答があり、また勧告時期については「一昨年並みの日程を勘案しつつ努力する」ことが述べられた。
組合本日は、2012年人事委員会勧告に向けた、市労連としての申し入れを行う。
日頃から、大阪市職員の賃金・労働条件の改善に尽力されている貴職に対して、敬意を表します。
8月8日、2012年人事院勧告が行われ、この大阪市においても勧告に向けて最終的な作業の最中にあると認識している。その上で、本年の勧告にあたっては今回行われた人事院勧告に安易に追随することなく、また、市労連が本年3月28日に行った統一賃金要求に関する申し入れ内容を十分に尊重するとともに、本日申し入れを行う事項も含め、本年の勧告に十分反映されるよう強く要請する。
改めて、労働基本権制約の代償措置としての機能を発揮するとともに、中立機関としての独立性を堅持しつつその職責を果たされるよう申し上げておく。
それでは、詳細について書記長から申し上げる。
2012年8月21日
大阪市人事委員会
委員長 西村 捷三 様
大阪市労働組合連合会
執行委員長 中村 義男
2012年大阪市人事委員会勧告に関する申し入れ
日頃から、私ども大阪市職員の賃金・労働条件の改善に尽力されている貴職に対して、敬意を表します。
さて、人事院は8月8日、月例給、一時金の改定を見送る一方で、55歳を超える職員は、標準の勤務成績では昇給停止とする給与法改正勧告と、高位号俸から昇格した場合の俸給月額の増加額を縮減する人事院規則改正の報告を行いました。
月例給・一時金について、官民格差が小さく改定見送りを判断したことは、当然のことですが、50歳台後半層職員の昇給停止と昇格制度の見直しについては、給与改定・臨時特例法により減額されている中にあるにも関わらず、来年1月から、拙速かつ一方的に高齢層職員の給与引き下げを強行しようとするものであり、遺憾と言わざるを得ません。
この国家公務員給与の引き下げが、地方や地場企業に波及し、内需の回復に悪影響を与えることを危惧しています。
本年度の勧告にあたっては、このような不当な人事院勧告に追随することなく、大阪市人事委員会として主体的な立場を堅持し、毅然として対応していただくよう求めます。
一方、大阪市当局は、私ども大阪市労連との合意がないまま、8月から行政職給与水準の引き下げと、持家にかかる住居手当の廃止を強行しており、年度途中にもかかわらず給与水準が著しく低下する事態となっています。
こうした市側姿勢は、極めて問題があり、人事委員会勧告制度をも否定しかねないものと認識しています。労使合意に至っていない大幅な給与削減が行われることについて、人事委員会としての見解をお聞かせ願いたい。
その上で、現在、貴職におかれては、勧告に向けて最終的な段階にあると考えますが、そうした前例にない事情にあることを十二分に踏まえて頂き、精確な公民水準比較を行った上で勧告するよう求めます。
加えて、大阪市では、2009年度から財政悪化を理由に給料カットが実施され、本年4月からは、非管理職平均で6.7%の給料カットが行われており、労働基本権の代償措置である人事委員会勧告の空洞化につながる事態が続いています。
他都市人事委員会の動向にも注視しながら、大阪市職員・組合員の生活実態を考慮して作業を進めるよう求めるとともに、大阪市労連が本年3月28日に行った申し入れ趣旨を尊重されるよう改めて強く申し入れます。
以上
その上で、3月28日の統一賃金要求に関する申し入れの回答と事前質問事項である、本年の勧告に向けた基本的な姿勢、ならびに本年の調査作業の進捗状況と特徴点、現時点で予定されている本年の勧告時期についてお聞かせいただきたい。
人事委員会 「2012年統一賃金要求に関する申し入れ」については、人事委員会に諮った結果、別紙のとおり回答する。
また、ただいま受けた「2012年大阪市人事委員会勧告に関する申し入れ」については、事前に聞いていた申し入れの内容を人事委員会に諮っている。本日は、その結果に基づき、回答をお求めの件について、本委員会の見解等を申し述べる。
まず、8月から実施されている給与制度の改定に関する本委員会の見解としては、勤務条件条例主義のもと、労使が勤務条件について交渉を行い合意することは、職員の自らの勤務条件に対する納得性を高めるとともに、職員の士気を高め、ひいては市民サービスの向上にも資するという観点から重要なものと認識している。
一方で、8月に行われた給与制度の改正は、職員の給与等が社会一般の情勢に適応するよう、随時、適当な措置を講ずる義務を地方公共団体に課している地方公務員法第14条第1項の規定に基づくものと理解するところである。
この給与制度の改正により、職員の給与は引き下げられることとなるが、職員の給与については、地方公務員法第14条第2項及び第26条により、人事委員会は、市会及び市長に対して、給与報告・勧告を行うこととされていることから、本委員会は、今後、労働基本権制約の代償措置として必要な給与報告・勧告を行うという地方公務員法に定められた責務を果たしてまいる。
本年の勧告に向けた基本的な姿勢としては、人事委員会は、職員の労働基本権が制約されている中で、その代償措置として、地方公務員法に基づき、給与その他の勤務条件について、適切な勧告を行うべき機能を担っており、中立・第三者機関として、人事委員会勧告に対する市民からの信頼を一層向上させるため、その役割を適切に発揮し、勧告の内容等について、説明責任を果たすことが求められているところである。
これら法の規定及び人事委員会の役割・責務のもと、市内の民間企業従業員の給与と本市職員の給与とを均衡させることを基本としつつ、本市の給与制度が、国や他都市の状況、地方公務員法に定められた給与決定の諸原則の観点から、適切なものとなるよう勧告してまいりたいと考えている。
本年の調査作業の進捗状況と特徴点については、本年の民間給与実態調査は5月1日から6月18日にかけ、人事院及び大阪府人事委員会等と共同で、企業規模50人以上の市内388民間事業所を対象に行ったところであり、現在、その集計作業を進めているところであるが、民間給与を取り巻く環境については、厳しい状況がみられるところである。
給与制度については、民間給与の把握における賃金構造基本統計調査の参考としての活用、8月に行われた給与制度の改正を踏まえた給料表構造と職員の士気の確保、人事院が勧告した昇給・昇格制度の見直しなどの課題について、研究検討していく必要があると考えている。
その他にも、公的年金の支給開始年齢の引き上げに伴う高齢期職員の活用、人材の確保・育成、人事評価制度、超過勤務の縮減、両立支援やメンタルヘルス対策の推進等の課題について検討を進めていく必要があると考えている。
最後に、本年の勧告時期については、現在のところ、一昨年並みの日程を勘案しつつ努力してまいりたいと考えている。
以上である。
組合 ただ今、民調結果は厳しいものとなるとの見込みが述べられたが、民間給与実態を精確に把握しつつ、大都市における職員の生活実態を考慮した上で、私たちの生活を守る為の賃金水準を維持するよう求めておく。
申し入れでも述べたが、8月から市側は、労使交渉で決定されるべき賃金水準を、労使合意なく、また年度途中にあるにもかかわらず引き下げ、持ち家にかかる手当をも廃止する条例改正を行った。繰り返しになるが、労使合意に至っていない大幅な給与削減を行う市側の姿勢は、人事委員会制度を否定し、その機能・役割までも反故にするものであると認識している。
一方、先程の回答の中で「8月から行われている給与制度の改正を踏まえた給料表構造と職員の士気の確保、人事院が勧告した昇給・昇格制度の見直しなどの課題について研究検討していく」とされているが、人事委員会としての独立性を堅持し、単に人事院の姿勢に追随することのないよう強く要請しておく。
私たちは大都市に働く仲間とともに、8月23日には大都市人事委員会連絡協議会と交渉を行う予定であるが、人事院勧告内容の十分な分析はもちろんのこと、人事院勧告に安易に追随することなく、他都市人事委員会の動向にも注視しながら、大阪市職員の生活実態を考慮して作業するように求めておく。
最後に、これまで申し上げてきたとおり、月例給及び一時金が大幅に減額されている実情を鑑み、また、労働基本権制約の代償措置としての機能を発揮するとともに、改めて、中立機関としての独立性を堅持しつつその職責をはたされるよう要請しておく。
人事委員会 本委員会は、給与報告・勧告を行うにあたっては、これまでも、地方公務員法に基づき、民間給与の実態を精確に把握するとともに、国・他都市の動向等を踏まえ、中立的な第三者機関としての役割を果たしてきているところである。
いずれにしても、本日聞いた内容等については、人事委員会に報告させていただく。
以上
申し入れ項目 | 回 答 |
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1 人事委員会は地方公務員の労働基本権を一部制約した代償措置としての意味を持つことを鑑み、労使合意の内容、その経過、組合側の意見を十分尊重して勧告をすること。 | 地方公務員法第14条第2項及び第26条により人事委員会に与えられた権限(給与報告・勧告等)は、人事委員会の専門的で公正な中立機関としての判断により、職員の勤務条件の確保を保障するとともに、報告(勧告)に基づく給与は適正なものとして、市民の理解を求めるよりどころを与えるものであると考えており、今後も地方公務員法に基づき、適切に対応してまいります。 |
2 勧告に係る内容について、政府、総務省の不当な干渉に屈することなく、中立する第三者機関としての立場を重視し、公平公正な立場で作業を進めること。 | |
3 職務給や能力、実績主義などの給与決定の原則を無視した、年齢だけを理由とした給与引き下げを行わないこと。 | これまでも、給与報告・勧告は、職員給与水準と民間給与水準とを均衡させることを基本に、職務給の原則など地方公務員法に規定されている給与決定の諸原則に適うよう行っているところです。 |
4 勧告にあたり、地公法第24条第3項に規定する給与基準を考慮する場合は、大都市における生活事情、特に住宅事情、物価、生計費に重点を置き判断すること。また、給料表の作成については労使交渉の決定事項を最優先とし、作成に関しての内容に踏み込まないこと。 | 生計費の算定は毎年4月における費目別平均支出金額を基礎として行い、給与勧告資料の労働経済指標において全国と本市民間の生計費・物価の状況を比較するとともに、標準生計費(理論生計費)の算定・公表を行っているところです。給料表の勧告については、人事委員会の説明責任、機能発揮の観点から研究を行っていく必要があると考えています。 |
5 民間給与実態調査及び公民給与の比較を行う場合は、労働基本権の代償機関としての責務を果たすことを前提として、組合と協議した上で下記の方法を取ること。(1) 比較企業規模を50人以上とした調査比較方法を止め、少なくともこの方法を取り入れる以前の比較企業規模に戻すこと。また、団体交渉によって賃金、労働条件を決定している事業所を対象とし、「会社更生法等の適用企業」は調査対象から除外すること。 | 調査対象企業規模については、国において平成18年より企業規模50人以上100人未満の事業所についても調査対象とされ、本市においても、民間給与実態調査は人事院等との共同調査であることから同様に実施してきたところであり、今後とも国等の動向を踏まえ、対応してまいりたいと考えています。 また、民間給与実態調査は、民間事業所を無作為で調査することが市民の理解を得る大きな要素となっており、作為的に一部の事業所を対象除外とすることは誤解を招きかねず、加えて、現実の問題として、当該調査が人事院等との共同調査となっていることからも、本委員会のみ調査対象の考え方を変更することは困難であると考えています。 |
(2) 比較対象職種は、行政職(一)表関係業種とし、職務の対応にあたっては機械的な職名区分をやめること。 | 比較対象職種は、基本的に公民双方の大部分を占める職種ということが妥当であり、人事院は行政職(一)表、本市人事委員会においても行政職との比較を行ってきているところです。 職務の対応については、「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」(総務省)、「官民給与の比較方法の在り方に関する研究会」(人事院)などの報告書や平成18年8月の総務省通知等を踏まえ、級構成の改正に伴う対応級の設定を行ったところです。今後とも、国や他都市の動向等を踏まえ、引き続き研究してまいりたいと考えています。 |
(3) 比較給与の範囲を原則として公務員の基本給に相当する給与とすること。 | 民間においては、いわゆる基本給部分と呼ばれるものであっても、資格給、年齢給、職能給等さまざまな要素で組み立てられている場合が多く、一律に基本給部分をどこまでとみなして調査することは困難であると考えています。 一方、昨今の人事給与制度の変革の流れのなかで、民間の給与の構造は大きく変貌の様相を見せており、今後とも、より精密な公民比較を行うため、研究を続けてまいりたいと考えています。 |
(4) 精確な公民較差を算出するためにも、追加較差を算出すること。 | 例年、積み残し事業所の追跡調査については、人事院が定めた調査期限一杯のところまで努力しているところです。 |
6 地域手当については、本給繰り入れを基本とすること。 | 地域手当は、国家公務員において、民間賃金の地域間格差が適切に反映されるよう、主に民間賃金の高い地域に勤務する職員に対し支給することとされているもので、国の制度にならった手当のひとつであります。人事委員会としては、民間との比較給与のなかに含めて較差を算出していますが、手当の配分や制度のあり方などについて、国や他の自治体の動向も見守りつつ、今後とも研究してまいりたいと考えています。 |
7 住居手当については、地方公務員の住宅制度や現状を考え、廃止または引き下げは行わないこと。 | 持家に係る住居手当については、任命権者において廃止の方向性が示され、8月1日に関係条例の改正が行われたところです。本委員会は、昨年の給与報告・勧告において、直ちに廃止すべき状況にはないものの、その状況は流動的であり、住居手当制度全般について検証、検討していく必要がある旨を意見として言及しましたが、今回の廃止措置は任命権者において住居手当のあり方について検討された結果として実施されるものと考えます。 |
8 通勤手当については、全額実費支給とし、交通用具利用者に対する手当を改善すること。合わせて、全額非課税になるよう関係機関に働きかけること。 | 通勤手当については、本委員会は、平成21年の給与報告・勧告において見直しの言及を行ったところでありますが、国や他の自治体の動向も踏まえつつ、今後とも研究してまいりたいと考えています。 |
9 特別給(一時金)については、比較方法を改め、公民同一基準により正確な月数算定を行うこと。また、勤勉手当の運用における成績率の強化拡大を行わないこと。 | 特別給に関する現行公民比較方式については、人事院等との共同調査という枠がある中で、調査対象を本市独自で設定することは困難であると考えています。なお、特別給の調査については、平成16年より前年夏冬の調査から前年冬と当年夏の調査に改められているところであります。 また、勤勉手当については、頑張った職員が報われるよう、制度の研究をしてまいりたいと考えています。 |
10 勤務時間については、年間総労働1,800時間を達成するためにも、週労働時間を37時間30分、日労働時間を7時間30分とするよう勧告を行うこと。 | 今後とも超過勤務の縮減や適正な労働時間管理の徹底という観点を中心に検討を進めてまいりたいと考えています。 |
11 定年延長を含む高齢者雇用制度については、60歳以前の賃金水準を引き下げることなく一層の充実をはかること。特に60歳以降も安心して働きつづけることができる雇用環境の整備や、定年退職後の生活設計が安心できるような新たな高齢雇用施策については、本市の業務実態を十分ふまえた高齢者雇用制度となるよう検討を行うこと。 | 平成25年度からの公的年金の支給開始年齢の引上げが迫っており、60歳以降の雇用確保策や人事・給与制度など、国の状況も踏まえつつ、本市組織にふさわしい高齢期における職員の活用について、検討を進めてまいりたいと考えています。 |
12 女性の労働権確立、男女共同参画社会の実現に向けて必要な施策の確立をはかること。「次世代育成支援対策推進法」の行動計画の着実な実施に向けて対策を行うこと。 | 男女の別なく、一人ひとりの職員の能力や適性に応じて人材を育成していく取組みの継続が肝要であり、今後とも男女共同参画社会の実現に資するよう、研究を進めていきたいと考えています。 |
13 福利厚生について、各種制度、各種施設、支給などの実態を調査すること。 | 給与以外の勤務労働条件等について、人事院は毎年項目を変えて民間給与実態調査の調査票のなかに盛り込んでいるところであります。一方、民間給与実態調査は人事院・大阪府等との共同調査であり、調査対象企業の負担増を招くことにより調査結果に影響を及ぼす別途調査については行わないよう人事院から指導を受けているところであります。 |
14 私たちの意向を反映し、早期勧告に向けて努力すること。 | 適切な時期に給与報告・勧告を行うことができるよう、努めてまいります。 |