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更新日:2011年2月17日

『(仮称)「新しい大阪市をつくる市政改革基本方針Ver.1.0」(素案)』についての政策要望を市側に提出

 市労連は、自治体闘争推進委員会、三役・常任合同会議での協議を踏まえ、『(仮称)「新しい大阪市をつくる市政改革基本方針Ver.1.0」(素案)』に対する政策課題について考え方をとりまとめ、2月17日(木)9時より、市側に対し以下の政策要望書を提出した。

2011年2月17日

大阪市長
平松邦夫 様

大阪市労働組合連合会
執行委員長 中村義男

「(仮称)『新しい大阪市をつくる市政改革基本方針Ver.1.0』(案)」
についての政策要望

 2010年10月、「(仮称)『新しい大阪市をつくる市政改革基本方針Ver.1.0』(素案)」(以下、「素案」と略)が公表されました。今回の「素案」は、現行の「行財政改革方針」が2010年度で終了することを受けて、2011年度以降の計画として策定されたものですが、行政のスリム化・財政改革のみに焦点をあてた前計画とは異なり、大阪市の公共サービスを取り巻く社会情勢の変化を踏まえながら、「地域から市政を変える」との理念を掲げ、市民を自治の主体とする「市政改革」の計画としたことは評価できると考えています。また、内部効率性とコストカット改革に終始した従来の考え方を変更して、「外部効率性の向上」という指標を導入することで、公共サービスの新たな評価基準を提示したことも重要な提案であると捉えています。

 また「素案」は、「多様な協働(マルチパートナーシップ)」として、地域振興会や社会福祉協議会などのコミュニティ型市民や、NPOや社会的企業などのアソシエーション型市民の協働による地域力の復興と、コーディネーターとしての行政の新たな役割、そこから派生する区役所機能の強化と人材育成の重要性などについて、最も力点を置いた記述がなされており、都市内分権や区政充実を主張してきた私たち市労連としては、真に市民を主人公とする地域自治を実現させるための改革として、着実に前進させる必要があると認識するものです。

 加えて、市民や企業が未だ担えていない新しい社会的サービスへの対応などを、行政が担う最適の公共活動として位置づけて今後とも担うべきとした上で、「なかでも、誰もが必要とするセーフティネットの維持と再構築などについては、責任を持って取り組む」とした点は、市民社会の安全・安心などに対する行政責任を明確にしたものとして評価できると考えています。

 今回の「素案」については、総じて評価できるものと考えていますが、「地域から市政を変える」取り組みを通じて、市民を主体とした大阪市政の再構築を実現させる必要があることから、考慮されるべき課題について、以下のとおり、現在時点における市労連としての考え方を提起し、今後の取り組みに活かされるよう要望するものです。

(1) 「多様な協働(マルチパートナーシップ)」をめぐって

 「素案」では、「多様な協働(マルチパートナーシップ)」によって担われる公共サービスの内容やその量が具体的に示されておらず、その明確化が必要であると考えます。本来コミュニティが担うべき仕事を行政が関与することが弊害となっている、とも読める表現もみられますが、行政の関与が縮小すればコミュニティが活性化するというものでもありません。

 現在、少子高齢化という人口構成の変化とともに、核家族化や高齢者を中心とした単身世帯の増加などが進行する反面、コミュニティ活動の有力な担い手であった商店街や中小企業の衰退による担い手不足の問題が深刻化しています。一方で、単身高齢者の介護問題や木造密集市街地に住む災害弱者の防災問題、子どもの安全確保など、コミュニティが対応に苦慮する新しい問題も生起しています。また、家族・個人の孤立が児童虐待や高齢者虐待、DVなど深刻な社会病理現象を招くなど、コミュニティが直面する問題は深刻度を増しています。さらに、職とともに住まいも失う若者の問題など、第一義的には労働政策や社会保障政策によって対応されるべき分野の課題でも、コミュニティにおいては若者の孤立(=社会的排除)の問題として顕在化するケースも多く、多様化する障がい者問題などとも相俟って、コミュニティの社会的包摂機能の強化が期待されるようになってきました。

 つまり、これらの問題の噴出がコミュニティに新たな機能を要請しているのであって、コミュニティの衰退がこれらの問題をもたらしたのではありません。こうした新しい都市問題ともいうべき課題に、有効に対応し得る担い手として「多様な協働(マルチパートナーシップ)」が求められていると考えますが、そこには「新しい公共サービス」の本格的な展開が必要です。そうでなければ、コミュニティが抱える多様な問題の解決に向けてNPOや社会的企業の参画する機会も生まれないであろうし、「新しい公共の担い手」といいながらも、安価な公共サービスの供給源としか認識していないのではないかとの疑念を払しょくできないと思います。

 そのためには、従来各行政分野で「縦割り」に担われてきた諸政策を区役所に一元化し、横断的にかつ地域の実情を踏まえて実施する事業内容と予算確保が必要と考えます。2011年度予算において、地域の特性や実情に応じて実施する事業予算が大幅に拡充されたことは評価できるものであり、コミュニティビジネスの創出に向けた取り組みも一歩踏み出したと認識するものです。引き続き、拡充に努めるよう求めるとともに、「新しい公共サービス」の本格的展開に向けた具体的な取り組みを一層進めるよう要望します。

(2) (仮称)「地域活動協議会」・(仮称)「区政会議」について

 「素案」では、地域に画一的に多くの協力依頼を行ってきたことが地域の自主的・自律的な活動の活性化を阻んできた、との反省が記されているにもかかわらず、(仮称)「地域活動協議会」・(仮称)「区政会議」の設置、地域担当職員の配置などが、他の記述に比べて詳細に記載されています。しかし、「何をするのか」が不明確な中で、システムだけが提示されても地域の理解は得られないのではないかと危惧します。

 (仮称) 「地域活動協議会」・(仮称)「区政会議」の役割を明確にし、既存の地域組織や地域と連携して行われてきた事業との関係を丁寧に説明することなど、地域に理解と協力を求めることが先決であると考えます。

 また、行政と地域との関係を「協働」の関係へと再構築しながら、市民参加・市民自治意識の向上につなげていくことが重要であり、行政からの新たな押し付けと映ったり、地域の負担感だけが増すようなことにならないように、ボトムアップ型の住民自治システムづくりであることを踏まえた取り組みを求めます。

(3) 区役所の機能強化について

 「地域から市政を変える」ためには、地域行政の拠点である区役所の機能強化が不可欠です。しかし、一方で要員削減目標が提示される中で、区に移管される権限や財源、実施体制の構想などが十分に示されず、さらには職員と地域の関係のあり方が明確にされていないこととも相俟って、区役所現場からは、地域担当職員のみが板挟みとなって苦労するのではないか、業務とボランティアの区別が不明確で職員のボランティアが強要されるのではないか、などの疑念が生じています。こうした不安を払しょくする意味でも、区長を局長級にする、副区長を設置するなど、区政拡充に相応しい区役所の機構及び体制の強化を求めます。

 他方、局業務の実態は全市的な施策づくりに限定されてはおらず、地域に関係する事業を直接担う業務も多く存在しています。一部業務の移管や区裁量予算枠の拡大にとどまるのではなく、区役所の機能強化に対応した局の改革や、区役所と局・事業所が持つそれぞれの強みや資源を有効に結びつけ、地域を軸とした有機的な連携をより促進させる施策を明確化する必要があります。

(4) 公共サービスのアウトソーシングをめぐって

 「素案」では、行財政のスリム化に力点を置いた外部委託化や指定管理者制度の拡大も多く盛り込まれています。しかし、公共サービス基本法(2009年7月施行)において、自治体の公共サービスに対する行政責任の明確化や公共サービス従事者へのディーセント・ワークの確保が謳われ、また、2010年12月には総務省から指定管理者制度の適切な運用について自治体へ助言する通知が発出されるとともに、片山総務大臣も年頭の記者会見において「自治体が、自ら内部で非正規化をどんどん進めて、なおかつ、アウトソースを通じて官製ワーキングプアを大量につくってしまったという、その自覚と反省は必要だろうと思います」とのコメントを発表しています。

 「素案」の重要な理念である「マルチパートナーシップ」の考え方や厳しい雇用経済情勢下雇用創出が急務であることなどを踏まえて、直営で担うべき業務についての認識を明らかにするとともに、指定管理者制度運用のガイドラインの改善や「公契約条例」制定など、公共サービスの質を確保する方策についても併せて提案すべきであると考えます。

(5) 実効的な人材育成システムの構築について

 「素案」に示されている方向性で改革が進めば、当然のことながらそれを担う職員には新しい能力が求められることになりますが、例えば市民協働に必要な能力にしても単に一定期間区役所に配置されれば得られるというものではありません。地域と接して業務をしている専門職の活用も必要ですし、機械的な異動ルールではなく、職員の参加に基づく実効的な人材育成システムの構築が求められると考えます。また、事業の縮小や業務のアウトソーシングに伴って行政現場におけるノウハウの喪失や技術力の低下も憂慮されており、これについても適切な対処を求めたいと思います。

(6) 成長戦略との連携について

 大阪市の発展には経済成長戦略は不可欠です。本社機能の移転など大阪圏の経済停滞を招いた原因をさらに厳しく分析するとともに、大規模公共事業に過度に依存した旧来の経済成長戦略から脱し、ポジティブで持続可能な、未来に希望が持てる成長戦略として「大阪市経済成長戦略(中間とりまとめ)」の豊富化が必要です。

 また、大阪市に人材が集まり、定着し、新しいアイデアが生まれて成長のエンジンとなるためには、大阪市という都市が魅力的でなければなりません。そして、大阪市が魅力的であるためには、まずそこに健全でホスピタリティ豊かな地域社会が存在していることが必要です。そのような意味から、「素案」と成長戦略はその根本において課題を一にしているともいえます。成長戦略を一部の担当部局や個別の事業プロジェクトの課題とせず、全市的に取り組んでいくためにも、「素案」と有機的に連携した成長戦略の具体化を求めます。

(7) 新たな政策協議ルールの確立について

 「素案」に関する労使協議の中心は政策協議です。しかし、現在労使間の政策協議は停滞しています。市労連は透明性を持った政策協議の場として「政策懇談会」の活性化を求めていますが、市側はこれまで十分な対応を行っていません。

 「地域から市政を変える」ためには、市政の最前線で市民と向き合う現場の意見・情報を具体事業に反映させるシステムが必要であり、現場に働く職員が業務として政策協議に参画できる場の設置や意見交換の活性化が必要と認識します。

 「素案」を具体化していくには、改革方向についての労使の認識一致が求められ、そのためには市労連・各単組・支部や職場における日常的な政策協議の場の設置と活性化が不可欠です。「(仮称)労使協働委員会」の設置など、新たな政策協議ルールの確立を求めるものです。

以上

 

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