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更新日:2011年1月31日

『(仮称)「新しい大阪市をつくる市政改革基本方針Ver.1.0」(素案)』に対し市労連としての見解を明らかにし、今後の取り組みについて三役・常任合同会議で確認する

 2010年10月21日(木)に公表された『(仮称)「新しい大阪市をつくる市政改革基本方針Ver.1.0」(素案)』についての市労連としてのコメントを示し、三役・常任合同会議で協議を行った。

 市労連としては、勤務労働条件に関わる課題も含まれているにも関わらず、事前の労働組合との意見交換も行われていないことについて問題があるとの認識をもち、自治体闘争推進委員会を開催し内容の検証や協議を重ね、三役・常任合同会議で再度協議したのち、市労連としての見解をとりまとめ、今後の市政改革基本方針に対する取り組みを進めることとした。

(仮称)「新しい大阪市をつくる市政改革基本方針Ver.1.0」(素案)
に対する市労連の考え方

1.はじめに

 2010年10月21日に、『(仮称)「新しい大阪市をつくる市政改革基本方針Ver.1.0」(素案)』(以下「素案」)が公表された。外部委員で構成する大阪市市政改革検討委員会での検討を踏まえて大阪市が取りまとめたもので、「地域から市政を変える」ことを基本的な考え方に据えて、1)大都市大阪の地域力の復興と公共の再編、2)区役所・市役所力の強化、3)持続可能な大阪市を支える行財政基盤の構築、の3つの指針を掲げて取り組みを進めるとしている。

 これに先立ち大阪市は、7月に「地域主権確立宣言」を発表し、「国・地方の関係、自治体相互の関係を、上からの統治を基本とする上下関係でなく、それぞれの役割分担の差として捉え、対等の関係に組み替える」としており、今回の「素案」では、その考えを踏襲しながら、1)これまでの公共の枠組みを見つめなおし、地域社会全体が力を合わせて担う新しい形の公共をつくる改革が必要であること、2)そして自治の主役は地域住民であること、を改めて明確化している。

 市労連として、地域主権の確立と新しい形の公共の確立を前面に打ち出した今回の「素案」は、経費節減・財政改革を主眼に置いたこれまでのものとは大きく異なり、政府が6月に閣議決定した「地域主権戦略大綱」に述べられている地域主権改革に向けた取り組みとも符合したものと認識している。地域主権改革の実現は、自治体を市民自治の視点から改革し、市民による大都市大阪の自律的運営の実現をめざすものであり、そのためには行政の体質転換とも言うべき自己改革が不可欠であることを再確認し、自らの課題と位置付けて取り組む必要がある。そのためにも、組合員が長年にわたり培ってきた技術・知識・経験の活用など、労働組合の立場からも協力は惜しむものではなく、むしろ、実効ある改革として結実させるためにも、市民と日常的に接する広範な組合員の参加の下、積極的に議論参加しつつ改革を進めていかなければならない。

2.地域主権確立に向けて

 政府が6月に閣議決定した地域主権戦略大綱では、地域主権改革の意義について、「明治以来の中央集権体質から脱却し、この国のあり方を大きく転換する改革」とした上で、国と地方の関係を、上下の関係から対等の立場で対話のできる新たなパートナーシップの関係へと根本的に転換するとしており、また、その定義では「住民に身近な行政は地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにするとともに、地域住民自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにする改革である」と記されている。

 一方で、2009年5月には「公共サービス基本法」が成立した。小泉政権時代を中心に、新自由主義による市場万能論や、「小さな政府論」に基づいて財政再建を最優先した諸政策が進められたことで、国民の生活と安心を支える公共サービスの著しい劣化を招いた。「公共サービス基本法」はこの反省に立ち、公共サービスの提供主体がどこであるのかに関わらず、自治体の実施責任を明確化し、公共サービスを国民の権利として位置づけるとともに、自主的かつ合理的選択の機会や情報提供、苦情処理などを基本理念としており、公共サービスのあり方のパラダイム転換を定めた。この法案の成立を契機に、「公共サービスは行政が行うもの」としてきたこれまでの発想の根本からの転換が必要となっている。つまり、公共サービスの策定や選択には市民・住民が参加する仕組みづくり、すなわち、自治体を創造する主人公として市民・住民が関わっていく仕組みづくりが必要とされたのである。

 市労連は、今回の「素案」で「地域から市政を変える」とあるのは、公共サービスを、取り巻く環境の変化に対応し、地域主権改革の実現に向けた大阪市の決意を改めて内外に明らかにしたものと積極的に受け止める。言うまでもなく、この改革は、自治体も変わり、同時に住民も変わらなければ実現できない改革であり、全市を挙げた本気度が問われている。

 一方で、大阪市解体を謳い文句にした大阪維新の会の動きは、言葉としての地域主権を大義名分にしながらも、その本質は、時代錯誤とも言うべき府県集権型統治機構の確立をめざしており、こうした地域主権改革に逆行する政治勢力の台頭には、毅然として対峙していかなければならない。

3.「地域から市政を変える」ための課題、及びその実現に向けて

 この改革は、地域社会までを視野に入れた新しい公共をつくるための抜本的な取り組みと位置付けられ、10年程度の中長期的な視野に立ち時間をかけて取り組むとした上で、緊急の取り組みとして、5年を視野に当面の財政収支の改善に集中的に取り組むこと等が示された。

 そして、基本的な考え方として掲げた「地域から市政を変える」取り組みに関して、3つの指針(1)大都市大阪の地域力の復興と公共の再編、2)区役所・市役所力の強化、3)持続可能な大阪市を支える行財政基盤の構築)が掲げられており、多様な協働の取り組みと地域主権の理念を具体化する取り組みを軸に公共の再編を進めることや、区役所・市役所が地域社会全体で担う新しい公共のかなめの役割を果たすためにふさわしい職員や体制づくりを進めること、本市が担っている多くの公共的な業務の選択と集中・担い手の最適化等の観点から再構築する等としている。

(1) 「地域力復興と公共の再編」について

 とりわけ、大阪の地域社会の将来像を描きながら、地域の実情に応じて地域課題の解決に向けて取り組むための仕組みである(仮称)「地域活動協議会」の自主的な形成を促し、地域を支援する区役所とするために、地域担当制の強化や相談・調整機能の充実、(仮称)「区政会議」の設置など、取り組み推進のための具体課題が列記された。同時に、コミュニティビジネスやソーシャルビジネスの促進と活性化を進めつつ行政業務を最適な担い手に移していくとし、社会的ビジネスを促進しながら地域社会全体で担う新しい公共づくりを進める等が明記された。

 市労連は、地域主権・市民自治を実現するための仕組みとして、踏み込んだ具体的な提起がされ、市民が自治の主体となることをメインに据えた点は評価する。特に、(仮称)「地域活動協議会」が重要な位置を占めることとなり、実効性を伴う仕組みとして確立できるかどうかに、課題実現の成否がかかっていると言っても過言ではない。新しい仕組みの意義や目的もさることながら、具体的役割として何をするのか、さらに、これまでとどのように変わるのか等について、まずは地域に理解・協力を得ることが第一義であり、加えて、行政と地域との関係を「協働の関係へ」と再構築しながら、市民参加・市民自治意識の醸成とその向上に努めることが重要となってくる。「自主的な形成をお願いする」としたことが、行政からの新たなおしつけと映らないようにするのは勿論のこと、決して地域の負担感が増すようなことにしてはならない。

 こうした取り組みは、必然的に各区・各地域単位で個性を持った事業が展開されていくこととなり、行政も市民も各地域の独自性を認め合うこと、言い換えれば、行政としてこれまでの常識であった画一的な施策展開からの脱却が必要であることを意味する。いずれにせよ、仕組みづくり自体が目的化することなく、各地域の事情に応じた丁寧な対応が求められており、現場で混乱が生じないよう責任ある取り扱いが必要である。

 また、今後5年間の具体的な取り組みとして、社会的ビジネスによる公共の再編や、地域公共人材の充実への支援、地域活動に対する支援のあり方の再構築、事務事業などの見直しによる地域活動の活性化などが掲げられているが、どの課題も、取り組む課題は相互に関連しつつ多岐にわたる内容であること、さらに個々の取り組みにかかる具体的な業務対応や、(仮称)「区政会議」の位置づけなど解明すべき点もあり、市側の考え方を明らかにするよう求める。

(2) 「区役所・市役所力の強化」について

 前述した地域力の復興を実現させるには、区役所・市役所が、地域社会全体で担う新しい公共のかなめ役を果たす役割を担うべき、とする一方で、地域社会の維持・再生に向けて、「市民や企業がまだ担えていない新しい社会的ニーズへの対応、規制や誘導などの制度等の改廃や処分等の権限の適切な行使など、行政が担うのが最適な公共活動を自ら担う」「誰もが必要とするセーフティネットの維持と再構築などについては責任を持って取り組む」として、行政責任の範囲の明確化も行った。

 その上で、具体的には(1)地域を支援する区役所づくり、(2)区役所・局を通じた市役所力の強化、(3)地域支援力の強化に向けた取り組み、(4)市民サービスの向上と区役所事務の効率化に向けた取り組み、の4つの観点から整理されており、地域担当制の強化や相談・調整機能の充実等による市民生活支援の強化、(仮称)「区政会議」の設置、協働を担い地域主権確立にふさわしい体制づくりと新しい大阪市政を担う職員づくり、区役所権限と機能の強化、局の区役所支援の強化、区役所事務の効率化など、今後5年間の取り組み課題が列記されている。

 区政に区民の意見を反映し評価する仕組みとして(仮称)「区政会議」を設置して、「地域事情を踏まえて課題解決に向けた協働型区政を実現する」とされたが、その機能は、1)区政に関して意見を述べる、2)区政に関する評価を行う、の2点に止まっている。本庁中心の集権型から分権型へ転換させていくことと合わせて、区民の意見を直接反映できる仕組みをつくるとしたことは評価できるが、小学校単位で設置する(仮称)「地域活動協議会」と合わせて、将来的には地域の課題は地域で解決する仕組みへと発展させていかなければならない。大都市のガバナンスのあり方として、行政区・地域レベルに本格的な住民自治の仕組み・組織を置く必要があり、区役所が、地域社会の課題を解決するための協働の拠点としての機能を持つことが重要な点であると考える。

 これらの課題については、勤務労働条件に関わる課題(柔軟な勤務時間の導入、OB職員の活用、事業所の統合・再編、技能職員の活用、窓口業務の効率化、集約化や複数区連携など)が多くあり、個別内容の詳細な検討と課題解明、及び十分な労使協議と合意が必要である。

 同時に、人事異動や服務規律の確保、新たな課制の導入等の記載もあり、管理運営事項とされる課題についても市側からの必要な情報提供と十分な意見交換が必要である。特に、職員づくりや人材マネジメントについて、素案に示されている方向性で改革が進めば、それを担う職員には新しい能力が求められることになるが、単に一定期間区役所に配置されれば得られるというものではなく、地域と接して業務をしている専門職の活用も含めて、実効的な人材育成システムの構築が不可欠である。また、事業の縮小や業務のアウトソーシングに伴って、行政現場におけるノウハウの喪失や技術力の低下も憂慮されており、適切な対処が重要である。

 地域力の復興・公共の再編の実現には、人材育成と同時に、その拠点となる区役所の体制整備も重要なカギを握るのは間違いない。「人材は組織の礎」と表現しつつ「区役所業務の特性を重視した人事異動の推進」との記載があるが、区役所・市役所を本気で変えることを内外に示すのであれば、局から区に移譲される事業・権限の一層の明確化と、区長の局長化などを盛り込むことも必要であると考える。

 あわせて、区内事業所のそれぞれの情報や資源を地域において共有化し一体的な施策が実行できるよう、「区行政連絡会議」及び「同小会議」、「現業職場事業所等連絡会議」など、既存の会議の活性化をはかることも重要である。

 また、「職員のモチベーションを高める」ことについて、今日の給与の切り下げをはじめとした労働条件の低下の中で、「褒める・認める組織風土」の醸成や研修、職員の対話の促進、「ボトムアップの風土づくり」等々の取り組みだけで行えるのか疑問である。モチベーションは、職員の適正な労働条件の維持・向上を基礎として高められるものであることを指摘しておきたい。

 さらに、地域支援に必要な事業や権限を区役所に移譲する必要があるが、区裁量予算の拡大としながらも具体性に乏しく、局から区への業務移管も地域防犯対策事業や子育て支援に関する事業の2つが掲げられているのみで、2010年2月の「新たな市政改革の骨子」に「地域支援に必要な事業・権限を区役所に移譲します」と記されていたことからすると不十分と認識せざるを得ない。従って、従来各行政分野で「縦割り」に担われてきた諸政策を区役所に一元化し、横断的にかつ地域の実情を踏まえて実施できるだけの事業内容と予算が明示されなければならず、その具体的一歩として2011年度予算において、事業及び財源・権限の区移管の工程表が示されるべきである。また、現状の局業務は決して全市的な施策づくりに限定されておらず、地域に関係する事業を直接担う業務も多く存在していることから、一部業務の移管や区裁量予算枠の拡大にとどまるのではなく、区役所の機能強化に対応した局の改革についての明確化が必要である。

 いずれにせよ、地域主権改革が実現可能な業務執行体制の確立が必要との立場から、個別課題に対して市労連各単組・職場での取り組みを進める。

 また、「非正規職員等の活用と本務職員業務の純化」として、臨時的任用職員や任期付職員、非常勤嘱託職員等を活用することと、本務職員は協働のコーディネートや政策・施策の企画・立案、公権力行使などの業務に純化することが掲げられているが、自立的・自発的な協働のコーディネートや、より市民実情に根差した政策・施策の企画・立案のためには、これまで本務職員として多くの職域で長きにわたって継承し発展させてきた、知識や技術・経験等が必要不可欠であり、短絡的に純化しえないものである。労働条件の格差がもたらす歪みは現在社会問題となっており、厚生労働省でも有期雇用規制強化の検討がされている時、人件費の抑制のため市役所の業務に有期雇用の固定化をはかり、職員の中に格差を持ち込む方向には明確に反対の立場を表明する。

(3) 「持続可能な大阪市を支える行財政基盤の構築」について

 これからめざすべき大阪市の行財政の姿は、「地域力の復興と公共の再編など協働による大阪市の枠組みの質的な発展につながる効果的な行財政運営」「創造的な産業・経済・持続可能な財政、しっかりした生活保障が実現され、持続的に市民生活の安定と都市の成長が確保される行財政の実現」とした上で、(1)社会経済環境の変化に対応した柔軟な取り組み、(2)地域活力の向上につながる取り組み、(3)再構築のための新たな手法の導入等の取り組み、の3点を、その実現に向けた方針にしている。

 とりわけ、「経済の活性化等により税収の安定化をはかる「さまざまな税外収入の確保などにより税収の安定化をはかる」としながらも、税収の安定化では「経済活性化による効果」に大きな期待が寄せられ、税外収入確保では「不動産売却・資産の有効活用」に頼らざるをえない実態が浮き彫りとなっており、大都市の自主財源確保に向け、国に対する一層の税源移譲を求めていくことが重要である。一方で、実施編で示された5年間の具体取り組み項目を見る限りでは、事務事業の点検・精査や経費節減の徹底、職員数の削減や総人件費抑制、外郭団体や経営形態等のあり方について検討等が掲げられ、削減目標の達成を掲げた経費節減重視の従来方針と比べて大きな変化は見られないが、事務事業総点検の際に「地域力の復興」「市民生活の基盤づくり」「大都市大阪の活力・貢献」の視点で検証するとしたことは異なる点であり、前段に記述されている市政改革推進のための体制確立に併せて、その整合性を厳しく精査することが不可欠である。

 事業・施策の再構築にかかる取り組みの視点に、「市民との協働の視点からの見直し」が含まれていないのは不十分だが、再構築にあたっての物差しの中に「施策・事業の担い手や実施手法・手段の最適化」を掲げたことで、社会的ビジネスの活用などによる公共の再編につながる道筋をつけたのは重要な点である。市民が行政の具体的事業に直接関わることの意義は大きいし、市民がそうした経験を積むことが、わがまちに対する愛着を抱くきっかけづくりとなる。

 その上で、現在、地域のコミュニティが抱えている多くの課題、例えば、児童虐待や高齢者虐待、DV、介護問題の深刻化、商店街の衰退、地域の防犯・防災などのさまざまな都市問題ともいえる課題に、多様な協働(マルチパートナーシップ)を有効な担い手として機能させていく必要があり、地域力の復興につながる重要なファクターとなる。しかしながら、これらは、個人や地域の自助・共助で解決できる問題ではなく、言い換えると「担い手や実施手法・手段の最適化」を打ち出したことで物事が順調に動き出すとも思えない。つまり、「新しい公共サービス」を事業化させるための積極的な方針がセットで示されなければ、簡単には機能しないであろうし、事業化もされていないところにNPOや社会的企業の参画も望めない。

 多様な協働(マルチパートナーシップ)の取り組みを重要視しながらも、担うこととなる公共サービスの内容やその量が現時点で具体的に明らかになっておらず、事業・施策の再構築とするなら、経費削減のみに収斂せず、必要な事業には積極的な予算化を打ち出していく大胆な市側姿勢が不可欠である。

 都市基盤施設の経営形態等のあり方検討では、港湾事業、中央卸売市場、上下水道事業、高速道路、交通事業、廃棄物処理などについて、「官民の役割分担、委託化、指定管理者制度などの民間活力の導入、より望ましい経営形態等の観点から方向性を示す」等とされているが、事前の情報提供もない内容も記載されている。管理運営事項を盾にして、事前の労使協議もない中での一方的な公表は、市労連として認めるわけにいかず、たとえ管理運営事項であっても、勤務労働条件に影響を及ぼす課題は、公表前段階での労働組合との協議・意見交換をルール化した上で、具体実施に際しては労使での交渉・協議と合意を前提とすべきである。

 その上で、公共サービス基本法において自治体の公共サービスに対する行政責任の明確化や公共サービス従事者へのディーセントワークの確保が謳われており、素案の重要な理念である「マルチパートナーシップ」の考え方や厳しい雇用経済情勢の中で雇用創出が急務であることなどを踏まえるならば、直営で担うべき業務について認識を明らかにするとともに、指定管理者制度の運用のガイドラインの改善や「公契約条例」制定など、公共サービスの質を確保する方策が示されなければならない。

 また、市民生活の基盤づくりの視点から、安全・安心、障害者、高齢者、住宅など計7つの施策分野を整理し、人口減少・超高齢化社会、厳しい財政状況など取り巻く環境の変化に対応して、「高齢者」分野から「子ども・教育」「雇用・勤労」の分野へのシフトを行い、重点的に投資するとの考えが明らかとなった。将来を見越した大胆な施策転換を示したと受けとめるが、とりわけ新たな施策・事業への転換として「優先順位付けや選択と集中」とされており、現時点での詳細は不明だが市民サービスの低下を招かない対応が必要である。

 一方で、持続可能な行財政基盤の整備にあたっては経済成長戦略が不可欠であり、企業における本社機能の移転など大阪圏の経済停滞を招いた原因をさらに厳しく分析するとともに、大規模公共事業に過度に依存した旧来の経済成長戦略から脱し、ポジティブで持続可能な、未来に希望が持てる成長戦略として「大阪市経済成長戦略(中間とりまとめ)」の豊富化を求めたい。大阪市に人材が集まり、定着し、新しいアイディアが生まれて成長のエンジンとなるためには、都市が魅力的でなければならず、そこに健全でホスピタリティ豊かな地域社会が存在していなければならない。その意味で、素案と成長戦略はその根本において課題を一にしているとも言える。従って、成長戦略を一部の担当部局や個別の事業プロジェクトの課題とせず、全市的に取り組んでいくためにも、素案と有機的に連携した戦略の具体化を求める。

(4) 人員削減、総人件費抑制について

 職員数の削減及び総人件費のさらなる抑制として、5年間で4,000人(将来的には約9,000人)削減するとしながら、給与カットの継続と超過勤務手当の半減、管理職ポストの削減など、総額650億円以上の人件費を削減することが公表された。

 職員数の削減人数は、今後5年間の定年・早期退職者数見合いが見込まれており、事業所の再編統合や、施設の廃止、保育所の民営化、委託化の推進などにより生み出すことが想定されているが、個々の詳細が明らかにされておらず、はじめに削減数値ありきの計画と言わざるを得ない。予め目標数値を掲げた職員数の削減は、削減そのものを目的化することとなり、結果、職務遂行に影響を及ぼして市民サービスにも影響しかねない。住民サービスに直結する基礎自治体としての役割を踏まえるべきであり、市民サービスの低下に繋がりかねない安易な人員削減計画には明確に反対の立場を表明する。また、5年前の新規採用凍結方針の影響から、多くの職場で年齢別・職種別の職員構成バランスが崩れており、組織の活性化や人材育成、技術・ノウハウの継承など、将来の業務推進体制にも深刻な影響を及ぼすことが懸念される。厳しい状況はありつつも、削減計画のみではなく人員採用計画を同時に示し、必要な人材確保に努めるべきである。

 さらに、2018(平成30)年までの収支概算が示され、このまま推移すると2,700億円もの累積収支不足となる見通しが明らかにされたが、生活保護費などの扶助費の増加や、過去の市債の償還がピークとなること、加えて阿倍野再開発事業などの財務リスク処理の影響が原因とされている。とりわけ生活保護の増加に伴う扶助費の大幅増が、市財政に深刻な影響を与え続けているにもかかわらず、根本解決に至っていない現実は看過できない問題であり、社会保障制度全般のあり方を含めた生活保護制度の抜本的改革の実現に向けた大阪市の役割は非常に大きく、全力で取り組むべき課題だ。

 2012年度には単年度収支不足が生じると言われている中で、年平均で300億円もの収支不足解消策が必要とされ、「中期的な収支均衡に向けたフレーム」として1)生活保護費の交付税措置不足の解消で150億円、2)政策推進ビジョンの効果発現による税収増で30億円、3)さらなる経費削減で120億円、この3点で収支均衡をはかるとしている。とりわけ、3)の取り組みを前倒しして実施し、来年度にはその効果を生み出すことを目標にして、前述した事務事業総点検の具体化を進めるとしているが、総じて、収支不足の解消に向けた責任ある市側対応と努力が無ければ実現できない。

 その「中期的な財政収支概算」には、2011年度以降も「給与カットの継続」が、あたりまえのように収支概算に盛り込まれ、2017年度までの継続実施が前提とされていること自体に大きな問題があると言わざるを得ず、客観的な財政状況の厳しさは理解しつつも、「給与カットは早期に終了すべき」との我々の要求に応えるべきである。

4.今後の取り組みについて

 財政問題、今後の方向性等、市政改革が今ほど必要とされている時は無い。また、地域主権改革の実現についても、労働組合としても積極的に進めていくべき課題であり、そのために必要な取り組みについて協力を惜しむものではない。しかし市政改革は、人員の削減や人員配置をはじめ、労働の内容、職員のモチベーションの問題等々、全体を通じて労働条件と密接に関わるものであり、この「素案」についても、管理運営事項であることを盾にして労働組合との交渉・協議を免れるものではない。

 労働組合としても政策要望を取りまとめ、市側と建設的な立場から意見交換及び労使協議を進めていきたいと考えており、市労連としてこれまで透明性を持った政策協議の場として「政策懇談会」の活性化を求めてきたが、市側として十分な対応を取っていないのが現状である。素案の具体化にあたっては、改革方向についての労使の認識の共有化が不可欠であり、市労連・各単組・支部や職場における日常的な政策協議の場の設置と活性化実現のため、新たな政策協議ルールの確立を強く求める。また、勤務労働条件に関わる事項は、当然に、労使での十分な交渉・協議と労使合意を前提に取り組み、組合員が働き甲斐を持てる職場環境の整備に努めることとする。

以上

 

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