更新日:2018年3月15日
2018年統一賃金要求対市申し入れ
市労連は、3月7日(水)午後6時30分から開催した、2017年度市労連第1回委員会において確認された「市労連2018年統一賃金要求」について、3月14日(水)午後4時30分から、市側に対して以下のとおり申し入れを行った。
申し入れで市労連は、総合的な人事・給与制度の構築をはじめ、諸課題解決に向けて、通年的な交渉・協議を要請した。特に、技能労務職給料表については、「大阪市技能労務職有識者会議」において意見集約が行われたが、これ以上、技能労務職給料表の改悪を行わないよう求め、育児休業・介護休暇については、制度取得による不利益を早期に改善するよう強く求めた。また、非正規職員の課題については、2020年4月の「会計年度任用職員」の制度構築に対して、十分な交渉ができるよう早急な対応を求めた。
さらに、使用者である市側の責務として、組合員の置かれている状況を十分に踏まえて真剣に対処するよう要請した。
組合 本日は、2018年統一賃金要求について交渉を行いたい。
市労連は、3月7日に2017年度市労連第1回委員会を開催し、当面する2018年春季生活改善闘争を闘う方針と、市労連2018年統一賃金要求を確認した。
それでは、ただ今より、2018年統一賃金要求を申し入れる。
なお、具体的な要求事項については、書記長より申し入れる。
2018年3月14日
大阪市長 吉村 洋文 様
大阪市労働組合連合会
執行委員長 𠮷田 隆一
市労連2018年統一賃金要求に関する申し入れについて
政府は、給与制度の総合的見直し、退職手当や扶養手当の見直しなど、地方自治体及び人事委員会に助言と称する指導、圧力、不当介入を強め、自治体職員の給与制度は改悪の一途をたどっており、これ以上の地方公務員のさらなる給与引き下げは容認できません。
大阪市においては昨年の人事委員会勧告で、月例給は改定なし、一時金は0.1月分の引き上げが示され、勧告に基づいた改定となりましたが、組合員の給与水準は依然として低い状況にあります。また、「給与制度改革」以降、多くの組合員が最高号給に達しており、結果的に昇給できない組合員が年々増加しています。2015確定交渉においては、一部の給料表で号給増設が行われたとはいえ、極めて限定的なものであることから、現在の大阪市の給与制度は他に例もなく早期に見直すべきであり、早急に総合的な人事・給与制度を構築すべきです。
さらに、人事評価制度の本来の主旨にそぐわない「相対評価」による昇給や一時金への給与反映が実施されており「相対評価」による給与反映は、組合員の納得性が高いとは言えず、評価制度において慎重に検討を行い、十分な交渉・合意による改善をはかることはもとより「相対評価」自体の廃止を強く求めます。
大阪市として、「賃金・労働条件は、労使の交渉によって決定すべき事項」という基本態度を堅持し、組合員の生活実態、勤務条件・環境の改善にかかる下記の要求事項について、これまでの交渉経過と自主性をもった労使協議と交渉により実現されるよう申し入れます。
記
1.賃金引き上げについて
生活保障のため、大都市に見合う現行賃金水準の改善をはかること。
2.賃金体系の改善と配分について
賃金体系の改善にあたっては、生活保障を重視し、世帯形成時にあたる若年層と中高年層の体系是正をはかり、配分については本給重視とすること。さらに、55歳以上の昇給停止を見直すこと。
また、職務・職責に応じた総合的な人事・給与制度を構築すること。さらに、号給延長などの措置を講じ給与水準の改善を行うこと。
3.賃金決定基準の改善について
(1) 初任給基準(中途採用者を含む)の改善をはかること。
(2) 格付基準(臨時期間・前歴の格付通算を含む)の改善をはかるとともに、昇格枠の拡大と昇格条件の改善をはかること。また、昇格について公正・公平・納得性のある選考方法とすること。
(3) 給与制度改革が実施された結果、給与水準は大幅に抑制されていることから、国の昇給抑制の動きに追随しないこと。
(4) 病気休職等の昇給抑制者に対する復元措置を講ずること。
(5) 給料表については、職員構成及び業務実態を踏まえつつ、給料表構造の改善をはかること。また、専門職給料表においては、国・他都市事情を考慮して検討すること。
(6) 初任給調整手当については、支給額の引き上げを行うこと。
(7) 技能労務職給料表について、賃金センサスなどの民間企業給与データを活用した公民比較は、技能職員との業務実態と比べて正確性を欠き問題であることから、単純比較を行わないこと。また「市政改革プラン2.0」に基づく技能労務職給料表の改悪は行わないこと。
(8) 保育士・幼稚園教員については、その職の社会的重要性を踏まえた、給与水準の改善と昇格枠の拡大をはかること。
(9) 医師・看護師・福祉職員については、人材確保・定着の観点から、給与処遇の改善をはかること。
4.諸手当の改善について
(1) 扶養手当は属性区分の見直しや支給基準など、都度必要な協議を行い支給額の改善を行うこと。
(2) 通勤手当は支給基準の改善を行い、交通用具利用者に対する手当の基準を改善し、全額非課税となるよう国に働きかけること。また、経路認定基準の見直しに伴う課題は、十分な検証とともに引き続き必要な協議と改善を行うこと。
(3) 住居手当は、国と異なる実態を踏まえ、大都市での住宅事情に見合ったものとして、持ち家にかかる手当の回復を含めた制度改善と支給額の引き上げをはかること。
(4) 地域手当については、本給繰り入れを基本に改善をはかること。
(5) 夜間勤務手当及び超過勤務手当(深夜勤務を含む)の支給率の改善をはかること。
また、必要な時間外手当財源を確保し、全額支給を行うとともに、労働基準法を遵守した超過勤務命令の運用を行うよう周知徹底をはかること。
(6) 一時金については、期末手当一本とし、年間5.0ヶ月以上とするとともに、支給方法の改善をはかること。
なお、勤勉手当への相対評価結果の反映については、評価結果の納得性が得られないことから、労使合意を基本に十分な交渉・協議を行うこと。
(7) 特殊勤務手当については、業務実態を十分踏まえた手当制度として改善すること。
(8) 夜間看護手当については、医療技術の高度化等、深夜における看護業務の実態を踏まえ、支給額の引き上げをはかること。
(9) 課長代理、課副参事について、その役割を十分考慮した上で、給与水準の回復をはかること。研究職給料表について、課長代理に対応する級を新設すること。
5.昇給・昇格制度と人事評価制度について
人事評価制度については、4原則(公平・公正性、透明性、客観性、納得性)2要件(労使協議制度の確立・苦情処理機関の設置)の確立した制度に改め、人材育成を主眼とする制度運用をはかること。また、「職員基本条例」に基づく相対評価は、人事評価制度の本旨に反していることから廃止すること。
さらに、昇給制度等の検討については、将来の人事給与制度の全体像を見据え、あるべき昇給制度等の検討を早急に行い、労働組合との必要な交渉・協議を行うこと。
6.労働条件等の改善について
(1) 仕事と家庭の調和(ワーク・ライフ・バランス)の重要性を踏まえ、労働時間を短縮し、完全週休2日制の実施に伴う十分な条件整備をはかること。
また、働きやすい勤務環境の整備のため、安全衛生委員会を活用し、定期的な職場点検を行うこと。
(2) 職員基本条例に基づく、分限処分は行わないこと。
(3) 業務上交通事故に対する失職の特例を定めるなど、分限にかかる基準を見直すこと。
(4) 休職者の給与、給付内容などの改善をはかること。大阪市職員共済組合の傷病手当金附加金廃止に伴う代替措置を早急に講じ、休職期間中の無給期間を生じさせないこと。また、近年の休職者の実態をふまえ、「大阪市職員心の健康づくり計画」を十分に踏まえたメンタルへルス対策の一層の充実をはかること。特に、心の健康の保持・増進の観点から職場における勤務環境の改善をはかること。さらに「パワーハラスメントの防止等に関する指針」に基づき、パワーハラスメント対策の充実をはかるとともに、すべてのハラスメント対策を講じること。
(5) 職員の福利厚生については、福利厚生制度の果たしてきた意義をふまえ、地公法第42条に基づく使用者責任を果たしつつ、労使で十分な意見交換を行いながら「安心して働き続けることのできる制度の確立」「組合員の働き甲斐」につながる福利厚生制度の確立・充実に向け、福利厚生協議会等での協議を進めるなど、早期に改善をはかること。
(6) 病気休暇・休職制度の運用改善をはかること。また、現行の休暇制度・職免制度の改悪を行わず、有給教育休暇など休暇制度の新設・改善をはかること。
(7) 「育児のための短時間勤務制度」をはじめとした職業生活と家庭生活の両立支援策について、職場実態に応じた効果的な運用がはかられるよう努めるとともに、女性の活躍推進の観点をふまえ、育児・介護休暇の男性取得促進に向けた勤務環境の整備・充実に努めること。さらに、子育て、看護、介護等の勤務条件制度については、取得したことによる不利益が生じないよう、政策的な見地から充実をはかること。とりわけ、育児・看護職免については継続して実施すること。
(8) 雇用と年金の接続に関しては、年金支給開始年齢の引き上げと連動したものとし、大阪市においても総務省通知に基づき、再任用制度を基本としていることから、給与水準についても生活実態を踏まえた検証と処遇改善を行い、希望者全員の雇用を確保すること。また、定年退職後の生活設計が安心できるような高齢者雇用施策については、業務実態を十分ふまえた高齢者雇用制度となるよう検討し、労働組合との協議を行うこと。
(9) 臨時・非常勤職員及び任期付職員をはじめとする非正規職員の勤務・労働条件の改善をはかること。会計年度任用職員の制度構築にあたっては、労使での十分な交渉期間を確保するとともに、法改正の趣旨を踏まえた処遇改善をはかること。
7.職員のモチベーション維持・向上について
2014確定において「将来の人事給与制度の全体像を描く中で、あるべき昇給制度等の検討は不可欠である」とする人事委員会の言及を、市側としても検討するとしたことから、職員のモチベーション維持・向上は喫緊の課題であり、早急に研究・検討を行うべきである。
労使で、具体的に人事・給与制度全般にわたり、日常的に研究・検討するための場を設置するなど、必要な交渉・協議を行うこと。
8.最低賃金について
全国一律最低賃金制度確立のため、国に強く働きかけること。また、大阪市に働く者の最低賃金を月額166,700円(日額8,335円)以上とするとともに、労働条件(一時金・休暇等)についても改善すること。
9.賃金改定の実施ならびに支払いについて
(1) 賃金改定の実施日については、2018年4月1日とすること。
(2) 賃金改定の支払いについては、決定後すみやかに行うこと。
(3) 外郭団体への派遣等職員について、賃金改定に必要となる財源的措置を行うなど、本市職員同様の改定を確実に実施すること。
以 上
申し入れについては以上である。
その上で、申し入れにあたって市労連としての考えを申し上げる。
2018年春闘においては、一部大手産別では昨年以上のベアが実現されているところもあるが、中小企業などとの企業規模間格差が拡大していることから、社会全体の景気回復に向けた、地域に根差した景気の底上げが必要だと認識している。
市労連としては、例年、総合的な人事・給与制度の構築をはじめ、さまざまな諸課題の解決に向けた交渉を行ってきているが、組合員の賃金・勤務労働条件に関する課題については、確定交渉のみならず、通年的に交渉・協議を行い、解決をはかっていくべきであると認識している。市側には、本日の申し入れ以降、速やかに交渉・協議に応じるよう要請しておく。
技能労務職給料表については、この間、大幅な水準引き下げに向けたさまざまな動きが行われてきた。昨年4月の「技能労務職相当職種民間給与調査の結果等について」では、民間給与の状況と比較して民間技能労務職種全体の正確な輪郭が把握できておらず、調査データ数が少ないことを人事委員会は明らかにした。この間「大阪市技能労務職員給与検討有識者会議」において議論が進められ、意見集約が行われたが、これ以上、技能労務職給料表の改悪を行わないよう求めておく。
育児休業・介護休暇については、先日の主務教諭の労働条件交渉に関してマスコミは、取得を理由とする不利益な取り扱いとして法律等に抵触するのではないかと報道した。それに対し市側は、育児休業・介護休暇を45日以上取得した職員を非該当要件から除外すると修正したところであるが、行政職3級等の昇格についても、同様の規定となっている。こちらについても市側は、「昇格選考実施要綱」の見直しを検討するとしていることから、早期に改善をはかるよう強く求める。
また、非正規職員の課題について、昨年5月、法改正が行われ、「特別職」の範囲をより厳格化するとともに、「一般職」の非常勤職員を「会計年度任用職員」と位置づけ、任用方法や任期等を明確化するとした。大阪市ではすべて「特別職」に位置づけられており、人事委員会は昨年の勧告の中で、任用制度等のあり方について検討を始める必要があるとしている。2020年4月の施行を見据えると時間に余裕がなく、市側に対し、十分な交渉期間が保障できるよう早急な対応を求める。
さらに、「チェックオフ廃止」にかかわる労働委員会救済命令取消請求訴訟について、東京地裁が市側の不当労働行為を認め「請求棄却」とした判決を不服とし、市側が東京高裁に控訴したことは誠に遺憾である。
最後に、本日申し入れた「市労連2018年統一賃金要求」は、引き続き組合員が大阪市の公共サービスを担う上で重要な要求であり、使用者である市側の責務において、組合員の置かれた状況を十分踏まえて真剣に対処されることを強く求めておく。
市側 ただ今、多岐にわたる要求をお受けしたところであるが、まず、技能労務職給料表について、現段階での認識を申し上げる。
昨年7月以降、技能労務職員給与検討有識者会議を5回にわたって開催し、本年2月にはその意見が取りまとめられ、それをもとに市としての対応を検討しているところである。
引き続き、慎重に市内部での議論・検証を進め、何らかの制度見直しを実施する場合には、皆様には丁寧に内容を説明し、労使の合意を得るべく適切に対応してまいりたいと考えているので、よろしくお願いする。
昇格制度については、すでに、来年度の秋の3級昇格試験の実施に向けて、選考対象者の非該当要件から育児休業、介護休暇の取得者を削除する方向で見直しを検討しているところである。市としての方針を確定させたのち、皆様にお示しさせていただくので、合意に向けた協議をよろしくお願いしたい。
会計年度任用職員の制度構築については、非常勤職員の勤務・労働条件に関する重要な課題であり、現在、本市の非常勤職員の現状把握に努めているところである。今後、制度構築に向けた研究・検討をさらにすすめ、お示しできる段階に至った際には、適切な協議を図ってまいりたい。
その他の要求項目についても、制度の透明性を確保し、市民に対する説明責任を果たす観点から、今後、慎重に検討するとともに、大阪市労使関係に関する条例に基づき、適正かつ健全な労使関係の確保に努め、十分な協議のもと交渉を進めてまいりたいと考えているので、よろしくお願いする。
組合 ただ今、市側から、われわれの要求に対して考え方が示された。
組合員の賃金、勤務条件・職場環境の改善は、労使の自主的・主体的な交渉と合意により決定されるものであり、この間の労使交渉・協議において確認してきた経緯を踏まえ、誠意と責任ある市側対応と、労使対等の原則に則り、市労連及び傘下の各単組との健全な労使関係の構築に努めるよう要請しておく。
以 上