更新日:2017年9月5日
大阪市人事委員会第1回申し入れ
市労連は、9月4日に大阪市人事委員会に対して、2017年の人事委員会勧告に向けた「申し入れ」を行うとともに、春の段階で提出していた、2017年統一賃金要求に対する回答を引き出した。
申し入れの中で市労連は、民間給与データの取り扱いについては、従前の手法に改めることや「給料月額の減額措置」の即時終了を明確に言及するよう強く求め、大都市事情と大阪市に働く組合員の生活実態を考慮し、精確な公民水準比較を行った上で勧告するよう要請した。その上で、本年の勧告に向けた基本的な姿勢、ならびに調査作業の進捗状況と特徴点、現時点で予定している本年の勧告時期について明らかにするよう求めた。
人事委員会から「市内の民間企業従業員の給与と本市職員の給与とを均衡させることを基本としつつ、本市の給与制度が、国や他都市の状況、地方公務員法に定められた職務給の原則や均衡の原則といった給与決定の諸原則の観点から、適切なものとなるよう勧告してまいりたい」としながらも「民間給与を取り巻く状況については、全国の状況と比較し、厳しい状況も見られる」との回答があり、勧告時期については「昨年並みの日程を勘案しつつ努力する」ことが述べられた。
市労連は引き続き、本年の勧告に向けた人事委員会対策を強めることとする。
組合 本日は、2017年人事委員会勧告に向けた、市労連としての申し入れを行う。
申し入れ書手交
日頃から、大阪市に働く職員の賃金・労働条件の改善に尽力されている貴職に対して、敬意を表する。
8月8日、2017年の人事院勧告が行われ、大阪市においても勧告に向けて最終的な作業の最中にあると認識している。その上で、本年の市人事委員会勧告にあたっては、大都市事情と大阪市に働く組合員の生活実態を考慮するよう求めておく。また、市労連が本年3月23日に行った統一賃金要求に関する申し入れ内容を十分に尊重するとともに、本日申し入れを行う事項も含め、民間の賃上げ状況や物価の動向を踏まえ、本年の勧告に十分反映されるよう強く要請する。
改めて、労働基本権制約の代償措置としての機能を発揮するとともに、中立機関としての独立性を堅持しつつ、その職責を果たされるよう申し上げておく。
それでは、詳細について書記長から申し上げる。
2017年9月4日
大阪市人事委員会
委員長 西村 捷三 様
大阪市労働組合連合会
執行委員長 比嘉 一郎
2017年大阪市人事委員会勧告に関する申し入れ
日頃から、私ども大阪市に働く職員の賃金・労働条件の改善に尽力されている人事委員会に対して、敬意を表します。
さて、人事院は8月8日、内閣に対して2017年の「国家公務員の給与等に関する報告・勧告」を行いました。内容につきましては、月例給を平均631円、率にして0.15%、一時金を0.1月分引き上げ年間4.4月とするもので、月例給及び一時金において4年連続の引き上げではありますが、昨年を下回る低水準なものとなっています。
また、働き方改革や雇用と年金の接続に関する項目、さらに、非常勤職員の処遇など、社会全体的にも急務な改善が求められている課題におきましては、検討や指導とするのみで、具体策に踏み込んだ言及が行われていません。
大阪市では、昨年の勧告に基づき、本年4月から給料表の引き上げ改定が実施されていますが、その引き上げ額は非常に小さく職員の生活水準改善には到底至っていません。以前にも申し上げましたが、引き上げ額が小さくなった要因の一つが、民間給与データの基礎資料から、上下2.5%ずつを排除する手法の活用であったことは明白です。しかし人事委員会は、今年度から新たな手法を活用して、上下に突出したデータの除外判別することを明らかにしています。
市労連としましては、一定条件に基づいて抽出したデータである以上、比較対象とすべきであり、データを除外すること自体、職員の給与水準引き下げが目的であると認識することから、どのような手法を活用したとしても容認できるものではないことを、改めて強く指摘しておきます。また、人事委員会自らも問題としてきた賃金センサスの活用など、この間、市労連として指摘を行ってきました。
加えて「給料月額の減額措置」が現在も継続されていることから、組合員の生活実態は危機的な状況に置かれていることは言うまでもありません。これ以上の減額措置の継続は、職員のさらなる士気低下を招き、業務への支障や市政への悪影響をも懸念するとして、数年来の勧告で人事委員会自らも言及されていることから、8月17日に市労連が行った申し入れ内容を十二分に踏まえ、本年の勧告におきましては、明確かつ確実に即時終了を言及するよう強く求めておきます。
人事委員会は技能職員の給与水準に関しまして、2012年以降、民間の技能・労務関係職種従業員の給与水準調査や、市側が独自で実施した調査結果の集計・分析などを行い、さらに本年4月19日には、民間の給与水準を調査・分析し、市技能職員の給与水準との比較結果を報告しました。これら一連の調査及び比較は、技能職員の給与水準引き下げを目的とする、市側からの一方的な依頼に基づくものであり、中立機関としての職務の逸脱と、勧告制度をも否定しているということを、人事委員会自身が改めて自覚するよう厳しく質しておきます。
また、2017年4月より、府費負担教職員の給与負担等の権限が、府から市へ移譲されたことに伴い、教育職給料表が新規に作成されていますが、人事委員会に対しましては、教職員の給与・勤務労働条件につきまして、子どもたちの教育条件・環境の維持・向上を前提に、教職員のモチベーションを下げることにつながらない、良識ある対応を求めておきます。
現在、人事委員会におかれましては、勧告に向けての最終段階であると考えますが、大阪市に働く職員が現在おかれている状況を十二分に踏まえて頂き、精確な公民水準比較を行った上で勧告されるよう求めておきます。
職員が不安なく公務に専念できますよう、大阪市で働く職員・組合員の生活実態を考慮して作業を進められることを求めるとともに、人事委員会としまして、中立的な第三者機関の役割を十分に果たして頂き、その上で、市労連が本年3月23日に行った申し入れの主旨を尊重されるよう改めて強く要請します。
以 上
その上で、3月23日の統一賃金要求に関する申し入れの回答と、事前質問事項である本年の勧告に向けた基本的な姿勢、ならびに本年の調査作業の進捗状況と特徴点、現時点で予定されている本年の勧告時期についてお聞かせいただきたい。
また、本年4月以降も「給料月額の減額措置」が継続実施されている。申し入れの中でも表明したが、組合員の生活実態は危機的な状況に置かれていることから、8月17日に市労連が行った内容を十二分に踏まえ、人事委員会勧告とは別で取り組まれている「給料月額の減額措置」は即時終了するべきであり、繰り返し指摘しているように、人事委員会として終了するよう明確に勧告するべきである。改めて、この点についての人事委員会としての見解を示されたい。
人事委員会 2017年統一賃金要求に関する申し入れ」については、人事委員会に諮った結果、別紙のとおり回答する。
また、ただいまお受けした「2017年大阪市人事委員会勧告に関する申し入れ」については、事前にお聞きしていた申し入れの内容を人事委員会に諮っている。本日は、その結果に基づき、回答をお求めの件について、本委員会の見解等を申し述べる。
勧告に向けての基本的な姿勢については、人事委員会は、職員の労働基本権が制約されている中で、その代償措置として、地方公務員法に基づき、給与その他の勤務条件について、適切な勧告を行うべき機能を担っており、中立・第三者機関として、人事委員会勧告に対する市民からの信頼を一層向上させるため、その役割を適切に発揮し、勧告の内容等について、説明責任を果たすことが求められている。
これら法の規定及び人事委員会の役割・責務のもと、市内の民間企業従業員の給与と本市職員の給与とを均衡させることを基本としつつ、本市の給与制度が、国や他都市の状況、地方公務員法に定められた職務給の原則や均衡の原則といった給与決定の諸原則の観点から、適切なものとなるよう勧告してまいりたいと考えている。
本年の調査作業の進捗状況と特徴点については、本年の民間給与実態調査は5月1日から6月17日にかけ、人事院及び大阪府人事委員会等と共同で、全産業を対象として、企業規模50人以上、かつ事業所規模50人以上の市内439民間事業所を抽出して行った。現在、勧告に向け、作業を進めているが、民間給与を取り巻く状況については、全国の状況と比較し、厳しい状況も見られている。
給与制度については、公民給与の比較の在り方や賃金構造基本統計調査の参考としての活用、民間給与データの取扱い、平成24年8月に行われた本市の給与制度の改正などを踏まえた給料表構造と昇給制度の在り方、昨年に人事院が勧告を行った扶養手当の見直し、高齢層職員の給与の在り方、教職員の給与制度などの課題について、研究検討していく必要があると考えている。
本市の保育士及び幼稚園教員については、平成27年4月にそれぞれ新たに独自の給料表が策定されたところであり、その給料表の改定の必要性について、平成25年より実施している民間の同職種の者の給与水準の調査結果の他、その職務の重要性、処遇確保の必要性、他都市の状況、本市保育所及び幼稚園の運営への影響や、賃金センサス結果に基づく一般的な民間従業員の給与の状況、本市の保育士及び幼稚園教員以外の職員の給与改定の状況等も考慮して、検討する必要があると考えている。
人事管理制度につきましては、これまで人事委員会勧告・報告や「人事管理制度に関する報告」において、様々な意見を申し述べてきた。今後とも、必要に応じて、長期的視点に立った組織・人員体制の構築、人材育成・活用、人事評価、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた長時間勤務の是正、両立支援の推進、非常勤職員の任用制度等の整備といった課題について、適宜、意見を申し述べてまいりたい。
本年の勧告時期については、現在のところ、例年並みの日程を勘案しつつ努力してまいりたい。
次に、給料月額等の減額措置について、本委員会としては、これまでも、給与減額措置に係る条例意見照会の際には、人事委員会勧告制度の趣旨とは異なるものとして意見を付してきた。
給与減額措置は、平成21年度の開始から本年で9年目という長期にわたり継続されており、条例上、平成30年3月まで実施するとされている。かかる措置の背景として、本市がきわめて厳しい財政状況であることは本委員会としても理解するが、長期にわたり給与減額措置が継続されることによる職員の執務意欲等への影響も懸念され、早期に解消されることを望むものである。
組合 ただ今、本年の民間給与の状況について、全国の状況と比較し厳しい状況も見られるとのことだが、組合員の期待も大きいことから、民間給与実態を精確に把握しつつ、大都市における職員の生活実態を考慮した上で、私たちの生活を守るための賃金水準を維持するよう求めておく。
給与制度については、賃金構造基本統計調査の参考としての活用や、民間給与データの取り扱いについて触れられている。民間給与データの取り扱いについては、ここ数年来、上下合わせて5%が基礎資料から除外されており、そのようなデータの取り扱いが、公民較差に影響を及ぼしていたことが明らかとなっている。人事委員会は、今年度から新たな手法を活用して、上下に突出したデータを除外判別するとしているが、この間、市労連として再三指摘を行ってきているように、精確なデータに基づいた公民比較を行うという職責を果たす上でも、従前来の手法による取り扱いを改めて要求しておく。合わせて、賃金センサスの活用に関しては、その調査対象や調査時期等、問題点が多く、その活用は認められるものではない。
現在の給料表構造と昇給制度においては、給料表と昇給制度の乖離が大きく、各級最高号給に位置付けられて昇給できない職員が多数存在しており、職員の勤務意欲の観点からも研究・検討ではなく、早急に抜本的な見直しが必要である。
その他、昨年、人事院が勧告を行った扶養手当の見直しや、高齢層職員の給与のあり方について、研究・検討していく必要があるとしている。とりわけ、扶養手当の見直しに関しては、民間の支給実態からも乖離していることから、国の見直しに安易に追随しないよう、市労連として求めてきており、昨年の段階では見送られている。昨年の交渉でも述べたが、何よりも、市職員における家族実態や手当の支給状況を考慮するべきであり、国に準じた見直しを行うことなく、独自性と主体性を持って対応するよう改めて求めておく。
また、保育士及び幼稚園教員の給料表の課題についても、給与水準が従来に比べ大幅に低くなっていることは言うまでもなく、いずれ多くの組合員が最高号給の適用を受けることとなる。待機児童解消に向けた動きがある一方で、社会的にも、保育士の処遇が極めて低く人材不足が問題となっており、職務の重要性や処遇確保の必要性、保育所及び幼稚園の運営への影響を考慮すると、早急な給料表の水準回復が必要である。
さらに、人事委員会は技能職員の給与水準について、市側からの一方的な依頼に基づき、民間給与水準の調査・分析を行い、市技能職員の給与水準との比較結果を4月19日に報告している。本報告を受け市側は有識者会議を設置し、技能職員の給与水準見直しを検討している。申し入れの中でも指摘したが、こうした行為は、第三者機関としての職務を逸脱し公正性を欠いていることから、本調査及び比較結果は受け入れられないとともに、改めて、中立・公正な第三者機関としての職責を全うするよう要請しておく。
府費負担教職員に対する新たな人事・給与制度等においては、大阪市における教育水準の向上に向け、現場の実態を踏まえたものを構築しなくてはならない。
「給料月額の減額措置」についてであるが、これまでと何ら変わらない表現となっており、われわれとしては不満である。繰り返しになるが、職員の勤務意欲や市民サービス低下を危惧するのであれば「給料月額の減額措置」は直ちに終了することを、明確に言及するよう改めて強く求めておく。
私たちは大都市に働く仲間とともに、8月22日には大都市人事委員会連絡協議会とも交渉を行ってきたが、人事院の勧告及び報告内容の十分な分析はもちろんのこと、安易に人事院勧告に追随することなく、他都市人事委員会の動向にも注視しながら、大阪市に働く職員の生活実態を考慮して作業するよう求めておく。
最後に、勧告時期について、例年並みの日程を勘案しているとのことであるが、近年の勧告時期が過去と比べて遅くなっていることに問題意識と持つものである。人事委員会の報告・勧告を受け、その後、給与改定をはじめ確定交渉を行っていくに際し、勧告時期が遅くなればなるほど交渉期間が圧縮されることとなる。職員の賃金・労働条件は、労使においての主体的な交渉・協議によって決定されることが大前提であるので、四囲の状況からも、人事委員会の作業が非常に困難なことは認識しているが、十分な交渉期間を確保するということを踏まえ、勧告時期を考慮されるよう要請しておく。
これまで申し上げてきたとおり、この間、私たちの実質賃金が大きく引き下げられてきたことを顧み、また、労働基本権制約の代償措置としての機能を発揮し、改めて、中立機関としての独立性を堅持しつつその職責を果たされるよう求めておく。
人事委員会 本委員会は、給与報告・勧告を行うにあたっては、これまでも、地方公務員法に基づき、民間給与の実態を精確に把握するとともに、国・他都市の動向等を踏まえ、中立的な第三者機関としての役割を果たしてきている。
本日お聞きした内容等については、人事委員会に報告させていただく。