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更新日:2010年9月17日

2010年大阪市人事委員会報告・勧告

【市人事委員会】
公民較差▲0.35%(1,486円)、特別給(一時金)▲0.2月を勧告

【市労連】
給料月額の減額措置に対する対応は極めて不十分
行政職給料表3級等の最高号給の切り下げ、一時金勤勉手当にかかる扶養手当算入廃止に言及したのは決して認められない

 大阪市人事委員会は、9月16日(木)午後3時45分から市長、続いて市会副議長に対して、2010年の「職員の給与に関する報告及び勧告」を行った。

 また、市労連に対し、午後5時から「報告・勧告」についての説明があった。

 市労連は、とりわけ給料月額の減額措置に対して中止勧告を行わなかった人事委員会の姿勢とその対応を批判しつつ、労働基本権制約の代償措置として与えられた役割と責務を果たすよう求めた。

 さらに、行政職給料表3級等の最高号給の切り下げについて昨年に引き続き言及したことや、一時金勤勉手当にかかる算定基礎額への扶養手当算入廃止にも新たに言及したこと等についても、市労連として決して認められないと抗議の意思を明らかにした。

 その上で、賃金・労働条件の決定はあくまでも労使の主体的な交渉による合意が基本との立場を踏まえ、本年の較差にかかわって市側と交渉を行うことを表明した。

人事委員会委員長 これまで検討してまいった結果、とりまとめることができた「職員の給与に関する報告及び勧告」を、本日、市長及び副議長に対して行ったところである。

 「報告・勧告」の内容については、局長からご説明申し上げる。

監査・人事制度事務総括局長 まず、本年の民間給与実態調査では、人事院同様、比較対象事業規模を50人以上として調査を行ったところ、ベースアップを実施した事業所の割合や、雇用調整の状況など、全国以上に厳しい状況が見られたところである。

 本年の給与改定についてであるが、月例給については、職員と民間従業員の本年4月分支給額を調査し、責任の度合、学歴、年齢別に対応させ、ラスパイレス方式により比較を行った。職員給与については、昨年度に続き、本年4月より給料及び管理職手当の減額措置が実施されており、この給与減額措置がないものとした場合の行政職給料表適用者の平均給与月額は425,095円であり、給与減額措置実施後の行政職給料表適用者の平均給与月額は410,093円となる。一方、民間給与は423,609円となり、その差は、給与減額措置がないものとした場合には▲1,486円、率にすると▲0.35%となり、給与減額措置実施後は13,516円、率にすると3.30%となる。職員と民間の給与を均衡させるためには、本来支払われるべき職員給与である、給与減額措置がないものとした場合の職員給与との較差に基づき、月例給及び特別給の改定を行うことが適当であると判断したところである。

 また、特別給については、民間の支給割合は3.94月分となっている。ただし、勧告月数は、国や他都市と同様に、0.05月単位で決定しているので、小数点第2位を2捨3入した3.95月分となり、本市職員の期末・勤勉手当の支給月数4.15月分との差は、マイナス0.2月分となる。

 この公民較差の解消方法として、月例給及び特別給の引き下げ改定が必要となり、職務給の原則のさらなる徹底など本市給与制度上の課題等を考慮しながら、改定する必要がある旨、勧告を行った。

 まず、月例給については、給料表の引き下げ改定が必要であるが、本市では国及び他都市と比べ、年功的な給与上昇の抑制が不十分であることから、給料表の改定にあたっては、昇給カーブのフラット化をはかり、年功的な給与上昇をより抑制した給料表構造への転換を推進していく必要がある。そのための、昇給カーブのフラット化の方法について、具体的に言及した。また、行政職給料表以外の給料表の改定にあたっては、行政職給料表との均衡を基本とするが、医療職給料表(1)については、医師の処遇確保の観点から改定の必要のない旨を言及した。なお、本年人事院が勧告した50歳台後半層の職員に対する給与抑制措置については、本市においては給与減額措置が実施されていることなど国と本市との給与支給状況の相違などを勘案しながら、高齢期職員の活用の検討の中であるべき措置等を研究していく。

 期末・勤勉手当については、民間の支給状況や人事院が勧告した措置等を勘案のうえ、現行の年間支給月数4.15月分を0.2月分引下げ、3.95月分とすることを勧告している。ただし、本年度については、引き下げ月数0.2月分を12月期の期末・勤勉手当から差し引くよう言及している。

 なお、昨年に続き、期末・勤勉手当の支給割合につきましても、具体的な改定月数を勧告している。

 実施時期等については、改正条例の公布日の属する月の翌月から実施することとした。なお、平成22年4月からの年間公民給与を均衡させるため、医療職給料表(1)適用の職員及び給与減額措置が実施されている職員を除き、平成22年12月期の期末手当において、所要の調整措置を講じる必要がある旨言及した。

 勧告に基づく職員給与の試算については、今回の勧告が実施された場合、行政職の平均年収は106,489円の減少となり、その場合の影響額は約▲13億6千万円となる。また、仮に給与について大阪府に準じるとされている教育職員を除く全職員に同様の改定が実施されたとした場合の影響額は、約▲36億5千万円となる。

 次に、給与構造・制度の改善に向けた課題として、次年度以降も公民較差を勘案しながら、給料表における昇給カーブのフラット化を進めていく必要性について言及している。また、各級の給料水準にメリハリをつけたより職務給の原則に適った給料表構造へ転換していくことなど、給料表のあり方についてさらに検討を進めていきたいと考えている。

 また、昨年勧告したが未実施となっている行政職給料表3級の号給を最高号給から当面20号給程度カットするなどの措置について、確実に実施する必要があることを言及している。

 住居手当については、持家にかかる住居手当について民間の支給状況等を注視し検証を継続するとともに、住居手当全般について今後の制度のあり方を検討していく旨言及している。

 超過勤務手当については、民間の実態を踏まえ、平成23年4月より、月60時間の超過勤務時間の積算の基礎に日曜日又はこれに相当する日の勤務時間を含めることが適当である旨を言及している。

 勤勉手当については、本市係長級以下の職員に支給する勤勉手当について、平成23年12月期より、本市課長代理級以上の職員及び国家公務員と同様に、扶養手当月額等の総額に支給割合を乗じて得た額を勤務成績に応じた割増支給率を算出する際の原資とする必要がある旨を言及している。

 次に、時代の要請に応じた活力ある組織づくりに向け、継続的かつ計画的な人材の確保として、変化する人材供給構造に即した採用方針・試験体系とすることの必要性、専門職学位や民間企業での経験を持つ職員の管理職登用について研究していく必要性、国及び他都市と合わせ医師の定年の引き上げを検討する必要性などについて言及している。

 人事交流の推進として、民間や他の公務部門との人事交流などのより一層の有効活用により、職員の能力向上と組織全体の活力向上へとつなげていく取り組みの必要性などについて言及している。

 能力・適性に即した人材育成として、庁内公募や自己申告制度の有効活用、管理職員の部下育成能力を向上させるための研修を充実させる取り組みの必要性や、職員の能力開発の機会の付与等に男女で偏りがないようにする継続的取り組みの必要性などについて言及している。

 人事評価制度の安定的運用への取り組みとして、研修を継続実施することや、コミュニケーションを密にした日常的な指導・助言を行っていくこと、評価結果の反映手法・効果的な活用方法について研究検討する必要性などについて言及している。

 高齢期における職員の活用として、高齢期における職員の本市組織にふさわしい活用方法の検討や、採用から退職までの人事管理全体の見直しの必要性について言及している。

 また、仕事と生活の調和の実現に向けた取り組みの推進の観点から、超過勤務の縮減として、「時間外勤務の縮減にかかる指針」に基づくさらなる取り組みの推進や、管理職員が業務内容の見直し等に先頭になって取り組み、職員の勤務時間を適切に管理し、退庁しやすい環境整備に努める必要があることなどについて言及している。

 両立支援の推進として、育児休業等の制度を利用しやすい職場環境の形成に努めていく必要性や、取得率の低い男性職員の育児休業等を取得しやすい雰囲気醸成、意識啓発等の取り組みの必要性などについて言及している。

 メンタルヘルス対策の推進として、各職場での早期の適切な対応や、風通しのよい職場環境及び相談しやすい雰囲気醸成、職員一人ひとりの予防が肝要であることなどを言及している。

 以上が本年の給与報告・勧告の概要であるので、よろしくお願いしたい。

組合 貴人事委員会におかれては、平素より、私たちの賃金をはじめ労働諸条件等の維持・改善にご尽力いただいていることに敬意を表しておきたい。

 さて、ただ今説明された本年の「職員の給与に関する報告及び勧告」の内容について、何点か市労連としての考え方を申し上げたい。

 まず、官民の給与比較について、本市職員給与が民間給与を上回り、マイナス0.35%、額にしてマイナス1,486円の較差が生じていること、さらに一時金についても、民間支給割合からすると3.95月となり、現行支給月数に比べると0.2月分上回っているとしている。

 この内容は、月例給のマイナス較差は国の内容を大きく上回っており、人事院と同様に調査を行ったとされているが、報告で示された民間の給与改定の状況や国人勧の内容からしても容易に納得できるものではない。民間実態を踏まえたものとはいえ、昨年に引き続く月例給及び一時金の引き下げ勧告は、組合員にとって極めて厳しく、私たちの切実な要求に応えたものとなっていない。

 そして給与減額措置後との比較では、民間に比べて3.30%、額にして13,516円も下回っていることも明らかにされており、むしろ、その点を解消させるための勧告を行うべきである。前回交渉でも指摘したが、組合員はギリギリの生活を余儀なくされており、官民給与の較差解消が本来の役割であるにも関わらず、勧告制度とは別個で実施されている減額措置の中止勧告を行わず、私たちの要求に応えようとしない貴人事委員会の姿勢は、労働基本権制約の代償機関である人事委員会としての責務を果たしているとは言い難く、極めて不満である。

 給料表の改定に関して、昇給カーブのフラット化を推進して年功的な給与上昇を抑制する姿勢が示され、昨年と同様、各号給の改定率まで具体的に言及されたが、給料表の改定は、まさに労使交渉を積み上げて決着させるべき課題であり、以降の労使交渉を規定づけるような勧告はすべきではないと、今一度、改めて指摘しておく。その上で、私たちが連年に亘り繰り返し問題指摘しているにも関わらず、次年度以降もフラット化を進めていく必要性が言われており、各級間での給料水準の重なりの点に触れ、職員のモチベーションを維持・向上させていくため等としているが、各級間での給料水準の重なりを見る限りでは、大阪市が国や他の政令市に比してとりわけ突出しているわけでもなく、貴人事委員会が具体的な改定率にまで言及し続ける必要性があるとは思えない。

 また、最高号給付近の給与水準の乖離が少ないことが、職員の意欲を抑制しているかのごとく言われているが、現在の給料表が、給与構造改革前からの長い歴史的経過をベースに交渉を積み重ね、必要な見直しを行い確立されてきたことを度外視し、一面だけを捉えて問題視するようなことはするべきでない。

 さらに、行政職給料表3級等の最高号給の切り下げについても、この間の私たちの要求に応えず昨年に引き続いて言及された。給与構造改革実施後の検証も行われていない中にあって、一部給料表の水準に焦点をあて、しかも当該号給付近に相当多くの組合員が存在している現状を直視することなく、職務給の原則の徹底を理由に、カットする具体的な号給数を明示していることは極めて問題であり、到底容認できない。

 いずれにせよ、給料表の改定はあくまで比較給与内における原資配分の問題であり、労使交渉事項に介入する内容の勧告は認められないことを申し上げておく。

 一方、国人勧が言及した50歳台後半層の職員給与を一律に削減させる措置については、国に同調しない考えが明らかにされた。大阪市の実情からして当然の対応であり、拙速な対応をしなかった貴人事委員会の判断は正しいと認識するものである。前回交渉でも指摘したように、今回の国人勧の対応は、職務給の原則、能力実績主義としてきたことからも問題が多く、また、公務員に対する総人件費削減論、とりわけ高齢者給与引き下げの強い政治的圧力がその背景として存在していることも見過ごしてはならない。この点について「定年延長を含めた高齢職員の活用の検討の中であるべき措置などを研究」とされているが、引き続き取り巻く状況の推移を注視しつつ、慎重かつ十分な検討の上で結論付けていく課題であることを申し上げておく。

 また、勤勉手当について、その算定基礎額から扶養手当月額等を含めず、その原資を勤務成績に応じた割増支給の原資とするよう言及された。市労連としては、人事評価制度そのものが未だに納得できる制度として確立しているとは言い難い状況との認識を持っており、そうした中にあって、評価結果を活用するための原資を増大しようとするのは時期尚早であると同時に、労使間で継続協議課題として確認している内容にまで人事委員会が踏み込むこと自体、明らかに行き過ぎた勧告と言わざるを得ない。

 住居手当に関して、制度全般について検証してあり方を検討するとされたが、民間や他都市状況をつぶさに分析・研究・検討を行った上で、今後の方向性を取りまとめるべきであり、拙速な結論づけは行わないよう求めておく。

 そして高齢期の雇用問題に関わっては、人事院が段階的定年延長に向けた意見の申出を本年中に行うことが明らかとなったが、一方で、50歳台後半層の給与の更なる引き下げも言及されており、今後、65歳定年制を前提にした給与のあり方も焦点化してくることも想定されることから、その際には市労連と十分な協議を行うよう求めておく。

 以上、貴人事委員会から言及されている個別課題に対して市労連の考え方なども含めて問題指摘したが、総じて納得できる内容ではない。私たちの指摘事項も含めて再度説明いただきたい。

人事委員会委員長 本年の勧告は、公民給与を均衡させるため、昨年に続き月例給及び特別給の双方を引き下げるという厳しいものとなっているが、公民較差については、毎年、人事院等と共同で実施している職種別民間給与実態調査により民間の給与水準を精確に把握し、職員給与との比較により算出しているものであり、公民給与を均衡させることは、公務員の給与水準について、各方面の理解を得る基礎である。

 一方、給与減額措置実施後の職員に実際に支払われている給与については、民間給与を下回っていることは事実であり、人事委員会としても給与減額措置にかかる条例意見照会に際しては、人事委員会勧告制度の趣旨とは異なるものであり、誠に遺憾であるが、本市の極めて厳しい財政状況からとられたやむを得ない特例措置であると理解する旨、意見を付してきたところである。

 また、給料表の昇給カーブのフラット化や行政職給料表3級等の最高号給の切り下げ、勤勉手当の問題等に関する人事委員会の具体的な言及に関してであるが、人事委員会としては、勤務条件条例主義のもと、労使が勤務条件について交渉を行い合意することは、職員の自らの勤務条件に対する納得性を高めるとともに、職員の士気を高め、ひいては市民サービスの向上にも資するという観点から重要なものと認識している。

 一方で、人事委員会は、職員の労働基本権が制約されている中で、その代償措置として、地方公務員法上、給与や勤務条件のあり方について、適切な勧告を行うべき機能を担っている。また、人事委員会は、中立・第三者機関として、給与報告・勧告に対する市民からの信頼を一層向上させるため、その役割を適切に発揮し、勧告の内容等についてこれまで以上に説明責任を果たすことが求められている。

 これら人事委員会の役割・責務に鑑み、給料表や諸手当等の給与制度について、より適切なものとなるよう、勧告又は意見として言及しているところである。

 なお、高齢期職員の活用の問題については、本委員会としても非常に大きな問題であると認識しており、今後、人事院の意見の申出の内容も踏まえながら、定年の引き上げも含め、高齢期職員の本市組織にふさわしい活用を検討していく必要があるが、その検討の中で、50歳台後半層の給与水準等、給与のあり方も研究していく必要があると考えている。

 本委員会としては、これまでと同様に、市労連の皆様方との連絡を密にしながら、中立かつ公正な第三者機関として、法に定められた責務を誠実に果たしてまいりたいと考えており、何卒ご理解を賜るよう、よろしくお願い申し上げる。

組合 私たちの指摘に対して、人事委員会の認識が述べられたが、改めて市労連としての見解を申し上げる。

 まず、給料月額の減額措置に対する対応は、過日の交渉で中止勧告を行うよう求めたにも関わらず極めて不十分と言わざるを得ない。大阪市の厳しい財政状況は理解するが、人事委員会の中立機関としての独立性を保ち、言うべきことは言うとの姿勢を貫き通すべきであり、「やむを得ない特例措置」との意見を付して追認すること自体問題である。労働基本権制約の代償措置として与えられた役割と責務を果たされるよう、改めて指摘しておく。

 また、行政職給料表3級等の最高号給の切り下げ、一時金勤勉手当にかかる算定基礎額への扶養手当算入廃止問題に言及したことは、市労連として決して認めるわけにはいかない。給料表や各種手当などは、毎年の官民較差に基づき、比較給与項目の範囲においてその較差を反映させるために労使交渉を行い、決定させるべき内容なのは今更言うまでもないことである。そうした労使交渉事項の具体内容にまで踏み込んで勧告することは、以降の労使交渉を規定づけるばかりか、多大な影響を及ぼすものである。この件に関して人事委員会としての役割・責務を唱えるのであれば、先に指摘した給料月額の減額措置に対しても毅然として対処すべきと考える。

 いずれにせよ、本日の人事委員会報告・勧告は、組合員の切実な要求に何ら応えられておらず、極めて不満であり到底納得できるものではないことを重ねて表明せざるを得ない。

 今後、市労連として、市側に対して私たちの賃金改善を求めて主体的な交渉を行うこととするが、貴人事委員会も、私たちの指摘内容を踏まえ、改めてその使命を果たされるよう求めておく。

以 上

 

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